●各論3

子どもが保育園に通うことは発達にいい?

YES
言葉が発達、乱暴な行動が減る

働く女性が7割を超える時代。待機児童問題を乗り越え、子どもが無事に保育園に入園できたかと思ったら、今度は預けて働く罪悪感を覚えるお母さんもいる。

しかし、その罪悪感から解き放たれそうだ。山口さんが共同研究者らとともに保育園通いが子どもや親に与える影響を分析したところ、子どもが保育園に通うことで子どもたちの発達にも、母親のメンタルにもプラスの効果があることがわかったのだ。

「保育園に通っている子は通っていない子と比べて、言葉の発達が順調という結果がでました。2歳半の時点で保育園に通っていない子に比べて偏差値換算で6から7くらい高かったのです。また、3歳半の時点で、落ち着きがないなどの多動性や、人に乱暴をするなどの攻撃性が保育園通いで低くなることもわかりました」

この調査では母親の学歴も見ている。母親の学歴が家庭環境を決めるわけではないが、親の学歴が低い場合、経済的な問題を抱えていたり、子育てに必要な情報が十分に得られなかったりする傾向があるからだ。

言葉の発達では母親の学歴に関係なくすべての家庭で保育園での効果が見られ、攻撃性や多動性は特に母親が高校を卒業していない家庭の子のほうが大幅に低くなることがわかった。

「母親の調査を見てみると、高校を卒業していないお母さんは自分が幸せだと思うかという『幸福度』が特に低く、子どもを叩いたり無視したりといった『しつけの質』もよくない傾向が見られました。しかし、子どもの保育園通いでお母さんのしつけの質が上がり、幸福度も上がりました。さらにストレスも減ることがわかりました」

保育園通いの効果は大きい

保育園には専門知識と経験を持った保育士がいるため、しつけも行き届き、子どもの行動がよくなるのだろう。さらに父親・母親にも間接的に気持ちのゆとりを与え、子育てストレスを下げることで、親子関係も安定するという好循環があるのだ。

「調査からは恵まれていない家庭の子が特に保育園の恩恵を受ける傾向が見られますが、どんな家庭にもいい影響があると考えています」