また「残業ゼロ」は、都職員の勤務時間縮減を進めているが、月平均残業時間は23時間前後とほぼ変わらない。東京都による、テレワークの推進が「介護離職ゼロ」に近づける可能性はあるが、都は都内に約7800人いるとされる介護離職者(総務省調査、17年)の推移がどうなったかを把握しておらず、「多摩格差ゼロ」はそもそも数値目標が存在しないという。

夢のようなマニフェストに騙されてしまった

全くもって7つのゼロを確実に達成しようという意欲が見えてこない。都民はまんまと小池氏の掲げる夢のようなマニフェストに騙されてしまったということなのだろう。

「小池氏は自身の選挙対策のパフォーマンスとして豊洲移転を止めた」(川松氏)。
「小池氏は自身の選挙対策のパフォーマンスとして豊洲移転を止めた」(川松氏)。(時事通信フォト=写真)

前述の築地市場の豊洲移転問題に対する小池氏の政策も、何度となく転換を繰り返した。彼女は1度もその理由や、新たな政策を実現するための具体的な解決策は明らかにしなかった。

豊洲への移転に莫大な費用がかかることと汚染対策の不足を非難していたはずが「築地は守る、豊洲を生かす」──汚染問題の解決はしないまま、財源を明言せずにどちらにも市場機能を維持すると転換。移転賛成派・反対派いずれの票も取り込んで都議選に勝利した後は、築地市場の跡地を国際会議場や展示場にすると発表した。

自らがかつて「市場機能を築地にも残す、いったん豊洲に移った仲卸の方々も5年後には戻れるようにお手伝いする」と発言した「事実すら認めようと」しなかった。

「築地の『食のテーマパーク』化構想も何もなかったことに……」(川松氏)

都民ファーストの会は小池百合子氏の発信力を生かしきることはできなかったのか……。
都民ファーストの会は小池百合子氏の発信力を生かしきることはできなかったのか……。(時事通信フォト=写真)

ナルシストもソシオパスも標的を非難することで人々の注意をそらそうとする。エディ氏は「ある政治家がナルシストのように見える一方で、よく嘘をつき、衝動性や攻撃性も高いようであれば、おそらくその政治家は両方の障害の特性を持っている」と指摘する。

一方で、いかさま王は「対立を煽る感情戦」によって、攻撃の標的とした人や周囲の人々からも強い感情を引き出し、メディアを通じて大衆を煽ることにも長けているという。

「いかさま王が感情戦を行うときにはまず攻撃の片棒を担ぐ人を手なずけます。そして彼らと非難の標的を攻撃し、コミュニティを分断し、ついには万人を支配するのです。また、彼らは『勝って権力を握ることだけ』にしか興味がないため、問題解決のための具体的手段に触れることはありません」(エディ氏)

こうして見ていくと、エディ氏が語る「権力を握らせてはいけない危険人物」に残念ながら小池氏はあてはまってしまう。しかし、それでも都民が選挙で選んだというお墨付きを彼女は得ている。それではなぜ、都民は「いかさま王」を当選させてしまったのか。