さて、対立屋のなかでもナルシストとソシオパスの特徴を持ち「独裁者、すべてを支配する最高権力者」になりたがる人のことをエディ氏は「悪性のナルシスト」または「いかさま王」と呼ぶ。

川松真一朗氏
川松真一朗氏

「『ナルシスト的(自己愛性)パーソナリティ』の持ち主は、自分が上だと見せるため、他者を下に置かないと気がすまない。彼らは他人を支配するために政治に興味を持ちますが、政治家としての手腕を持ち合わせていません」(エディ氏)

小池氏について生い立ちから現在に至るまでを緻密な取材をもとに綴った『女帝 小池百合子』で、著者の石井妙子氏は小池氏を「強者に憧れ、自分も強者でありたいと願」う人物だと表現している。「彼女はただ、上を目指しているだけ」「政治家として何かをなしたいわけではない。政治家として、より上の地位に就きたいだけなのだ」と言う。

川松氏も「小池氏を4年間見ていて思うのは、世間の風を見ながらやりすぎた。それは周りの人たちも含めてです。自分の信念があれば周りの意見も押し切れるのに……」と話す。

「コロナの自粛要請の中で、営業を続けたパチンコ店だけを公表しましたが、なぜパチンコ店なのか。これも世間がパチンコ、パチンコとパチンコ叩きに躍起になっていたからで、その空気を読んだだけです。コロナ対策では政治家としての軸を感じませんでした」(川松氏)

小池百合子は「いかさま王」か

またエディ氏によれば、「ソシオパス的(反社会性)パーソナリティ障害」の人は支配欲が強く、嘘や言いくるめなどの欺瞞に長けていて強い攻撃性があり、良心の呵責が欠如していると指摘する。彼らは「他人を支配し、恥をかかせることができる立場」に惹かれる傾向にあるそうだ。

ビル・エディ『危険人物をリーダーに選ばないためにできること』(プレジデント社)
ビル・エディ『危険人物をリーダーに選ばないためにできること』(プレジデント社)

待機児童、介護離職、満員電車、残業、都道電柱、多摩格差、ペット殺処分──小池氏は都知事に立候補したとき、7つのゼロを実現することをマニフェストに掲げていた。「2階建て電車を走らせ満員電車を解消する」といった解決策に実現性などなかったことは明らかだ。

また、小池氏は「条例をつくったり、法改正の必要はありません。それを公約とし、実行する」とも話した。この発言に石井氏は「彼女は法律にも規則にも、あまりにも無知であり、その自覚がなかった」と添える。

ちなみに、7つのゼロの大半は未達成だ。たとえば、2016年度に約8500人に上っていた待機児童数は、直近では3000人を下回る大幅減となっているがゼロにはまだまだ遠い。国会議員時代から取り組んできた無電柱化の推進も同様で、都道電柱のゼロを掲げたが、東京新聞によれば、電柱の地中化率は39%(16年度)から41%(18年度)に改善した程度だ。