タレント・パイプラインと自動車教習所

クロトンビルの大切な役割の一つとして、優秀な人材を育成し、組織に供給し続ける「タレント・パイプライン」としての機能が挙げられます。このパイプラインによって供給された人材は、各組織において「タレント・プール」として貯蔵され、次のステージで活躍する準備を整えます。もちろんその間に、次のポジションを務められるかどうかという適格性を見極められるわけです。

クロトンビルの研修は、基本的にすべて「昇格前研修」です。前回の記事で紹介したように、人と組織のレビューであるセッションCによってハイライトされた優秀社員は、昇格前に次のポジション・レベルで求められる能力をクロトンビルの研修で身に付けることになります。

この仕組みを私は、講演などで「自動車教習所」方式と呼んで紹介していました。1週間から3週間におよぶ研修は、まさに教習所の敷地内で車の運転という基本スキルや知識を身に付けるようなものです。

「この修了証書は将来のキャリアを保証するものではない」

研修の最終日、修了証書と記念品を参加者に渡した後、私はいつもこう言っていました。「今、皆さんが手にしている修了証書は、車の仮免許のようなものです。この研修で学んだことは、職場で実践して初めて意味があるものになります」

「これから皆さんは、このクロトンビルの教習所を出て、職場という路上教習で、ここで学んだことを実践することになります」
「その様子を皆さんの直属の上司、そして上司の上司、担当人事、ビジネス・リーダーたちが見ています。路上教習が合格となったら、次のポジションへの挑戦権を得たことになります」
「勘違いしないでほしいのは、このクロトンビルの修了証書は、皆さんの将来のキャリアを保証するものでは全くないということです。あくまで手にしているのは仮免許なのです」

すでにお気付きのように、昇格前研修を行い、タレント・プールをつくり、その中から昇格者を決めるということは、研修と昇進・昇格が密接に連動しているということを意味します。

実際、昇格者を決めるときの書類には、その人物の顔写真と共に、その横に名前、そして履修したリーダーシップ研修のうち最上位のコース名が記載されます。クロトンビルのリーダーシップ研修が、その人物の昇格要件として重要視され、昇格するに当たってその有資格者かどうかの判断基準の一つとして扱われるのです。