神社本庁に近い関係者ら反論も…

なお金刀比羅宮は今回の離脱決定に際し、公式ホームページで声明文を発表しているのだが、それは冒頭でまずこの「土地ころがし問題」に言及し、「非常に遺憾であると感じていた」とするもので、まさにこの疑惑によって背中を押されたのだろうと解釈できる文面である。ただ、前出の四国の老宮司はこう言う。

「金刀比羅宮さんは最近、神社本庁関係の集まりなどにあまり顔を出さなくなっていた。付き合いで出す一部の上納金なども断っていたと聞いており、後はいつ離脱するかのタイミングを計っていただけだったのでは」

金刀比羅宮の声明文によれば、同宮が具体的に離脱を思い立ったのは、約束されていた大嘗祭(天皇が即位して初めて行う秋の収穫祭。昨年11月14~15日に今上天皇が行った)の幣帛料(慶事などの際に神社本庁が加盟神社に配る金銭)が、実際には届かなかったことで「嫌がらせとしか思えない」と感じたことだったという。

「天皇陛下一代に一度の、奉祝の大御祭に際し、臨時の神社本庁幣が届かなかったことは、決して許されない無礼な行いであり、天皇陛下に対しても不敬極まりない行為であると言わざるを得ない」(金刀比羅宮公式HPより)

ただ「それは本当にきっかけに過ぎず、離脱はかなり前から考えていたのでは」(四国の老宮司)との声もあり、また神社本庁に近い関係者となると、「日ごろから会合にも顔を出さず、付き合いも減らしているのに、幣帛料だけ『届かなかった』などと騒ぐの心得違いだ」といったことまで言う向きさえある。ただ多くの関係者が異口同音に語るのは、「(金毘羅宮の離脱は)もう誰に止められるものでもなかったし、そこまで大きな驚きでもない」という認識である。

とはいえ、減少幅は言うほどひどくはない

ところで、先に神社本庁に加盟する神社は約8万と書いたが、文化庁の発行する『宗教年鑑』2019年版から正確な数を引くと、同庁に所属する個々の宗教法人の総数は7万8663である。この数は2009年版では7万9041だったので、ここ10年で神社本庁に加盟する神社は確かに減ってはいる(約0.5%減)。ただし現代人の「宗教離れ」などによって、日本では仏教、キリスト教、新宗教などまで含め、宗教法人の数は全体的に減少傾向にある。日本全国にある宗教法人の総数を『宗教年鑑』で調べると、2009年から19年の間に18万2601から18万1064となっており、これは率にして約0.9%減なので、神社本庁に所属する宗教法人数の減少幅は、宗教界全体のそれより、むしろゆるやかだと見ることもできる。

「実際小さな神社にとってみれば、神社本庁に多少の不満はあっても、本庁の定めるカリキュラムに沿って自分のところの神主を育成し、また横のネットワークにも頼れるということで、離脱はそう簡単に決断できるものではない。金刀比羅宮のように、独立独歩でもやっていける大神社とは話が違う。ああいう大神社が離脱したからといって、われもわれもと一般の神社までもが大量離脱する流れにはならない」(ある関東の神社宮司)