新品種開発には膨大な時間とお金が必要
日本国内における新品種の開発には、膨大な時間とお金がかかっています。優れた新品種を栽培するためには、毎年掛け合わせをしてその中から優れたものを選び出す地道な作業を行わなければなりません。新たな品種を生み出すには、品種改良に必要な経費と人件費がコストとしてかさみます。山形県の試算によると、品種改良に必要なものを購入する予算が年間2000万円、1人あたり年間500万円のスタッフが6人いるので、年間3000万円。2000万円と3000万円で年間5000万円がかかります。この費用は税金によって賄われる計算となります。
新たな品種を生み出すには、1年間では難しく、10年かかることも珍しくはありません。そうなると5億円が必要となります。このように、おいしくて見た目に優れる新品種の開発というのは、トライアル・アンド・エラーの泥臭い作業の連続した先にあります。日本国内に優れた品種が数多く存在する理由は、すべて「よりいいものをつくりたい」と願う職人技に近い日本人の意識的コミットメントから生まれていることは明らかです。
新品種開発における問題点
昨今の事例を挙げると、白いイチゴが人気を博していますが、公設研究機関の「栃木県農業試験場イチゴ研究所」に取材したところによると「偶然できた白いイチゴを使って、交配を重ねて白い見た目と、甘い味を作り出した」といいます。フルーツの世界についていえば、テクノロジーの発達した今でもいいものは人に手によって作られています。
製造業や医学の発展におけるイノベーションと、青果物の種の開発には寸分の違いもありません。あるとすれば、青果物であるためにイノベーションプロセスに記録が残りづらく、苗が流出してもトラッキングが難しい点にあります。それゆえ海外流出をふせぐためにあらゆる取り組みが求められます。そして種苗法改正はその取り組みの1つだといえるでしょう。