洋画を吹き替え版で観るのはもったいない

【ハリー】それから個人的には、音楽のような自分の興味のあるもので英語を学ぶといいと思います。

【三宅】音楽から入るのはとても良い方法ですよね。イーオンの日本人講師の中にも、洋楽が大好きで英語が好きになり、洋楽で英語を身につけた人が多いです。

【ハリー】ただ悲しいことに10年前と比べて洋楽の存在が日本でちょっとずつ落ちてきているんです。これにはわかりやすい理由があって、地上波のテレビが洋楽のアーティストを招かないようになったから。視聴率が取れないからです。

ワン・ダイレクションくらいの超大物レベルでも数字がちょっと動くくらいで、それ以下になると海外ではとんでもないスターなのに、日本では「誰やねん、こいつ」になってしまう。

【三宅】映画でもその傾向はありますよね。以前は「洋画を字幕なしで観たいので英語を学ぶ」という人が多かったのですけど、最近の若い人は日本語吹き替え版を好むという話を聞きます。

【ハリー】実際、吹き替え版の興行収入がいいんです。もちろん吹き替え版も素敵な作品だと思うんですけれども、やはり元の言葉を聞かないと役者さんが演技している意味がないですからね……。

僕がフランス語を勉強していたときに実際に行っていたことですけれども、好きなフランス映画のワンシーンを何度も見返して、セリフを全部書き出したんですね。わからない言葉があったらスペリングの目星をつけて辞書で調べる。そうやって深く「分析」をしていくと、ワンシーンであってもいろんな発見がありますし、体験として深く刻まれていくので、学習効果は高いと思います。誰でも好きな洋画はあるはずですから。

【三宅】それは面白いですね。

ヨーロッパ人が多言語をすんなり習得するワケ

【三宅】そもそもヨーロッパの人は多言語を学ぶのが普通ですよね。

【ハリー】はい。イギリス人もある程度フランス語を話せますし、イギリス以外でもバイリンガルは普通のことですよね。とくに北欧の人々が話す英語はものすごく流暢で、さらにドイツ語も話せるみたいな。

【三宅】何が違うんでしょう。教育なのか、言葉のセンスがあるのか。

【ハリー】LiLiCoさんが典型的な例だと思うんですけれども、子供のときから英語でテレビを観ている影響は大きいと思います。

【三宅】なるほど。日本ではまだ地上波で英語だけの番組はないですよね。そういうものがあれば、英語を小さいときから見たり聞いたりするのが当たり前になり慣れてくる。

【ハリー】そうですね。あとは幼稚園や小学校で英語を話す試験があるかないかで、天と地の差だと思います。

【三宅】大学入試に民間テストを一斉導入する予定が延期になりました。会話力を試すテストが後退した面はありますね。

【ハリー】非常に残念ですね。

イーオン社長の三宅義和氏(左)とハリー杉山氏
撮影=原貴彦
イーオン社長の三宅義和氏(左)とハリー杉山氏