店舗スタッフの発案で生まれた企画も

(3)「バリスタたちのおうちコーヒー」
パートナーが、自宅でのコーヒーの楽しみ方やアレンジレシピを紹介しました。この企画は、休業中のパートナーが社内SNSなどで自発的に投稿していた「Stay Home」の楽しみ方が発端です。
休業中でもコーヒーの知識を高め、仲間とのつながりを保とうとする店舗スタッフの思いに後押しされた企画となりました。

(左)バリスタがメッセージを書いたマグカップの写真/(右)渋谷パルコ店のバリスタが書いたメッセージ
(左)バリスタがメッセージを書いたマグカップの写真/(右)渋谷パルコ店のバリスタが書いたメッセージ

競合をしのぐ同社の強みは2つある。ひとつは社員・アルバイト・パートに限らず「スターバックスブランド」を愛する従業員が多いこと。そして立場に関係なく、自発的な取り組みを行い、それを会社も積極的に支援する仕組みがあることだ。

現に自粛期間であってもInstagramのフォロワー数は伸び続け、6月9日時点で264万人を超える。外食企業のアカウントとしては圧倒的1位だ。客観的には、時にお客以上にブランドを愛する姿勢に自己陶酔的な一面を感じるが、それが同社の躍進を支えたのは間違いない。

コロナ禍で「サードプレイス」のあり方に変化

筆者はかつて、単行本『日本カフェ興亡記』(2009年5月、日本経済新聞出版社刊)を著した。1章では「手軽さのドトール」VS「楽しさのスタバ」と章タイトルをつけた。

スターバックスが飲食を通じて「楽しさ」を提唱するのは、いまも変わらない。ちなみに同書で記した当時の国内店舗数は、「ドトールコーヒーショップ」が1138店(2008年8月末現在)、「スターバックス」が841店(2009年2月末現在)だった。現在はスタバが1500店超に拡大したのに対し、ドトールは1100店割れと縮小気味だ。

2000年代のスタバは「サードプレイス」を強く訴求し、同書でもこう紹介した。

もともとスターバックスが掲げるのは、単なるコーヒーストアよりも「サードプレイス(第三の場所)」としての存在である。その理念を同社では、次のように説明する。
「サードプレイスとは、自宅(ファーストプレイス)や職場・学校(セカンドプレイス)以外に、快適に過ごせる場所の意味だ。店という空間には、ドリンクやフードがあり、接客をするパートナーがいる。そんなサードプレイスになる店づくりを、当社では最も重視している」

当時の広報担当はこう話したが、今回は次の意識で「サードプレイス」と向き合った。

「デジタル上でも店舗と同じ、ぬくもりのあるつながりを持つため、パートナー(特に休業店舗のパートナー)にも、いつもと違う形で活躍してもらい、コンテンツの制作を行いました。たとえエプロンを着けて店頭に立てなくても、参加の舞台を提供し、お客様とのつながりを保ち続けてほしい、という思いもありました」(同社)

それが前述した3つの企画に代表される活動だった。