前代未聞の「30日間キャッシュバック保証」
Opendoorのような「iBuyer」をする企業にしてみれば、買い取った物件について「早く買い手を見つけたい」と当然思います。物件そのものが在庫になるので、長期間、抱えておくわけにはいきません。
そこでOpendoorでは、買い手にとって非常にありがたい(買いやすい)二つのしくみを導入しています。
ひとつは「30日間キャッシュバック保証」。これは業界にとって前代未聞の取り組みで、Opendoorから中古の家を買った人は、30日間住んでみて、気に入らなければ(購入時の手数料などを除き)全額キャッシュバックしてもらうことができるというもの。
住宅というのは、人生における最大の買い物なので、誰だって「失敗したくない」という思いが強い。そこで「30日間、試せる」というのは非常に魅力的なしくみといえるでしょう。
さらにもうひとつ。もともとアメリカでは中古物件を購入する場合、各種設備(電気系統、給湯設備、空調システムなど)の不具合に備えて1年間の保証がつくのが普通ですが、Opendoorはそれを「2年保証」に延長して、買い手にさらなる安心感を提供しています。
こうしたしくみを整えることで、Opendoorは業界を破壊するほどのインパクトで、急成長しているのです。
ライバル登場で価格競争が激化する
ただし、Opendoorのビジネスモデルを継続するにはかなりの資金が必要です。そのための資金を集め続けられるのか。ここは重大な問題になります。本書の第5章で、最近のスタートアップ・バブルの状況については詳しく触れています。
また、Opendoorの快進撃を見て「これは放っておけない」とばかりに大手不動産会社も「iBuyer」(不動産を買い取ってしまうやり方)を導入してきているので、今後の勢力マップがどう変わっていくのかも注目です。
Opendoorのビジネスの場合、シンプルに「安く買って、高く売る」ことがビジネスのキモであり、「即購入し、すぐに現金を支払う」というやり方によって、ある意味で中古住宅を安く買い叩くことができていました。しかし、そこにライバルたちが参入してくると、当然売り主も「早く現金化される相手のなかで、一番高値をつけてくれる相手」を探し始めます。OpendoorはAIを駆使することで高い査定価格を出すとしていますが、ライバルの登場と価格競争のなかで、今後どんな展開を見せるのか。注目したいところです。