家を売るには早くても2カ月ほどの時間がかかる。買い手を見つけなくてはいけないからだ。だが米国のベンチャー企業「Opendoor(オープンドア)」は、自宅を売りたいという人がいれば、最短2日で買い取ってしまう。不動産業界の常識を破壊する「爆速の仕組み」とは——。

※本稿は、斉藤徹『業界破壊企業 第二のGAFAを狙う革新者たち』(光文社新書)の一部を再編集したものです。

売家の看板が出されている家屋
写真=iStock.com/fstop123
※写真はイメージです

「手の届く範囲でビジネスをする」というイメージはもう古い

Opendoor(オープンドア)
本社 サンフランシスコ
創業年 2013年
サービス 不動産のオンライン買取販売
事業の着眼点 不動産をオンラインで買い取る。30日以内なら返金可、2年間の修繕保証も

Opendoorのビジネスモデルを語る前に、そもそも不動産業界にもテクノロジーの波が押し寄せているという背景を知っておきましょう。

近年は、既存の専門領域とテクノロジーを掛け合わせる「○○テック」という言葉をあちこちで耳にします。「フィンテック」(金融×テクノロジー)という言葉を聞いたことがある人も多いでしょう。そのほか「メディテック」(医療×テクノロジー)、「エデュテック」(教育×テクノロジー)などと並んで「不動産テック」という言葉が登場するほど、この業界もIT化が進んでいます。

もともと不動産業界は、いわゆる「町の不動産屋さん」のように、「顔を合わせて、手の届く範囲でビジネスをする」というアナログのイメージがあり、IT化が遅れている業界でした。「部屋探し」といえば「最寄りの駅の不動産屋さんに行ってみる」が当たり前だったのです。

しかし、テクノロジーの発展、浸透とともに「部屋探し」「家探し」「物件の売買」はもはや店頭よりもオンラインが中心となり、ポータルサイトの活用、AIを使った物件査定など、さまざまな側面でIT化が進んでいます。

その状況は日本もアメリカも同じです。ただし、日本では不動産情報の検索によく使われる「REINS(レインズ)」というサイトは不動産業者専用であるなど、一般の人に向けた情報公開が十分とはいえません。一方、アメリカでは、誰もがネットで詳細な不動産情報を検索できます。それぞれの地域の価格推移や売買履歴はもちろんのこと、近隣にある学校のレベル、犯罪に関する内容までさまざまな情報を自由に閲覧することができます。

そうした背景もあって、アメリカでは不動産テックがより進んでいるのです。