火付盗賊改、長谷川平蔵は、元盗賊だった連中を、処罰を免れさせてやるかわりに密偵として使っていた。

もちろん非公式な肩書きであるため、幕府から給料が出るわけではない。かといって密偵たちも生活していかなければならないから、なにがしかの食い扶持が必要となる。そのため、オモテ向きは、居酒屋を経営するなど職業をもっていなければならなくなるが、そんなに都合よくいく者たちばかりではない。

長谷川平蔵が「小遣い=アルバイト代」を与えなければならないケースもあったはずだ。

そのカネは、どこから出ていたか。

考えられるのは、火付盗賊改の役料(必要経費)、あるいは平蔵が自腹を切ることとなる。

平蔵の年収はいくらだったのか。

石高(基本給) 400石
役高(役職手当) 1100両
役料(必要経費) 60人扶持

石高とは、領地で収穫できるコメの総量のこと。この400石で領民も生活しなければならないわけだ。400石のうち、6割が領民、4割が領主の取り分となる。平蔵の取り分は4割の160石。

1石=1両=10万円に換算するとわかりやすい。

160石=160両=1600万円で平蔵の一家が暮らし、雇い人に飯を食わせ、年俸も支払わなければならない。ほかに馬の飼料代、薪代、衣服代などの出費が多く、赤字となるのが常だ。

そして役高(役職手当)1100両=1億1000万円、役料(必要経費)60人扶持=およそ100両=1000万円で、火付盗賊改の捜査費用すべてを賄わなければならないのだ。