9割近い医療従事者が「相談を言い出しづらい」と回答

ニンプスラボという妊婦と新生児に関するリサーチセンターが、働いている妊娠女性を対象にインターネットで行ったアンケート調査(5月11日〜13日、回答者数1264名)があるので結果の一部を紹介しよう。

まず「新型コロナウイルスによって自宅待機・休職など、出勤しないことを望んでいるか」との問いには、全体、医療従事者ともに7割が「望んでいる」と回答しているが、実際に職場で休職や在宅勤務についての「相談をした」という人は、全体で61.1%、医療従事者では57.3%にとどまっている。

「相談しなかった理由」(複数回答)で最も多かったのは、「言い出しにくい」であり、全体が68.0%である一方、医療従事者では87.9%にも上っている。第2位の「言ってもムダ」も全体が35.0%に対して医療従事者で49.5%、第3位の「他の人の目が気になる」も36.5%対53.5%と、いずれも全体に比して医療従事者の方が、職場の「休みにくい空気」に閉塞感を抱いているという実態が浮き彫りになった。

そしてその「休みにくい空気」は、決して労働者側の勝手な思い込みではない。

実際、相談した場合も、その「結果に満足しているか」との問いには、「満足」「まあ満足」が全体では22.0%ずつに対し、医療従事者ではそれぞれ11.8%と22.9%、「やや不満」「とても不満」は全体では17.4%と21.3%であるのに対して、医療従事者では17.6%と30.7%と、医療従事者では「満足」している人が1割程度しかいない一方、3割もの人が職場の対応に「とても不満」と答えているのだ。

具体的事項を記した要望書には3万8244筆の署名が集まる

「言い出しにくい」という職場環境の中で、いくら意を決して勇気を振り絞って申し出たとしても、職場がその訴えをしっかりと受け止めて対処してくれないという実態を、これらの数字は、はっきりと物語っている。特に医療現場では、単に「休みにくい空気」が漂っているだけではなく「休めない・休ませない環境」が事実として存在しているということが、このアンケートによって明らかにされたと言えるだろう。

冒頭に紹介した高橋医師は、Twitterで「妊娠中の女性医師 @savemoms_bbs」というアカウントのもと、「厚生労働省:妊娠中の医療従事者をCOVID-19から守ってください!」との署名活動を4月18日に立ち上げ、現在までに4万1000人以上の賛同者を集めている。5月15日には、具体的事項を記した要望書を、この3万8244筆の署名とともに厚生労働省に宛てて提出した。

実はその約1週間前の5月7日の時点で、すでに厚生労働省は、男女雇用機会均等法に基づく母性健康管理上の措置として、新型コロナウイルス感染症に関する措置を新たに規定している。

妊娠中の労働者が、保健指導・健康診査を受けた結果、その作業等における新型コロナウイルスへの感染のおそれに関する心理的なストレスが母体または胎児の健康保持に影響があるとして、主治医や助産師から指導を受け、それを事業主に申し出た場合、事業主は、この指導に基づいて、作業の制限、出勤の制限(在宅勤務または休業)等の必要な措置を講じなければならない、とするものだ。