Twitterでの言及数が新規視聴者獲得の生命線

つまり、ここまでの話をまとめると、下記のようになる。

(1)リアリティーを追求するため、番組ではヤラセ感を払拭。カメラやマイクは映さない。リアルっぽくあればあるほどよいという制作側の志向。
(2)それゆえにリアリティ番組であることを忘れ、没入する視聴者。
(3)出演者のSNSアカウントがあり、放送終了後に視聴者のタイミングで直接出演者にリプライを送る。
(4)SNS上で直接出演者と絡めることでより番組にハマる。さらにSNSで視聴者自身も番組のことをつぶやく出演者のAさん。
(5)Aさんの投稿がたまたまタイムラインで目に入ったSNSユーザーが、新規視聴者として番組を視聴。過去放送回からさかのぼって視聴し、リアルタイムで見ていた視聴者とは数日遅れで、番組のことをSNSで投稿する。「テラスハウス」の場合、Netflix放送から約1カ月遅れてフジテレビで放送されていたため、フジテレビの視聴者もここに分類される。

ここまでの流れを読み、「テラスハウス」に代表される恋愛リアリティー番組が、いかに“バズる”ための舞台装置を用意し、ここまで成長してきたかがわかるだろう(事実、番組の広報戦略会議では、先週放送回がどれだけSNSで言及されたかを真面目に議論する)。

SNS上での出演者への誹謗中傷は副作用

さらに、番組はTwitterでの言及数が新規視聴者獲得の生命線となっているため、賛否を呼びそうなシーンを入れることで、それにツッコミたくなる環境を整えている。

そのため、SNS上での出演者に対する誹謗中傷はある種の「副作用」だったと言える。しかし、その出演者が被る副作用に対し、芸能事務所も、番組制作サイドも保障をまったく準備していなかったといえよう。

もともと、フジテレビはわが国の恋愛リアリティショーのブームを作ってきた存在だ。ブームの火付け役になったとも言える「あいのり」は1999年にスタートしている。その、フジテレビは出演者の誹謗中傷や出演後の十分なケアをしてきたのだろうか。木村花さんの件は、SNS民だけでなく、フジテレビ側にも責任もあるのではないか。

そんな中、5月23日にフジテレビとNetflixから「テラスハウス」は放送が休止されることが発表された。だが、今後もテラスハスをめぐるリアリティーショーの制作サイドの問題は追及されることは避けられないだろう。すでに今回の木村さんの死を受け、制作サイドにいた人間から「ヤラセ」だったという告発記事も出ている。

これに対して、出演者の一人である新野俊幸さんはTwitterで下記のように反論している。