画面内にあるはずのマイクがどこにも見当たらない

筆者は、かつてある恋愛をテーマにしたネット番組の広報に携わっていたことがある。

恋愛リアリティーショーは主な視聴者が恋愛ドラマを好む10〜30代の女性ということもあり、近年市場が急拡大している。事実、ここ数年でも、恋愛リアリティーショーのラインナップはかなり増えている。

「バチェラー・ジャパン」(Amazon プライム・ビデオ)、「さよならプロポーズ」(AbemaTV)、「いきなりマリッジ」(AbemaTV)、「オオカミちゃんには騙されない」(AbemaTV)、「あいのり」(Netflix)など、どれも“素人”の男女が出演し、真剣な恋愛模様を映しているものだ。

<新日本プロレス>岩谷麻優(左)を攻める木村花(東京ドーム、2020年1月4日)
写真=スポーツニッポン新聞社/時事通信フォト
<新日本プロレス>岩谷麻優(左)を攻める木村花(東京ドーム、2020年1月4日)

だが、これらの番組を見て視聴者はあることに気づくはずだ。画面内に、あるはずのマイクがどこにも見当たらないのである。

これは、番組制作サイドが、出演者たちの会話を自然な男女の会話の“絵”として見せるために、カメラやマイクなどの素材は一切視聴者に見えないように配慮して編集されているからにほかならない。この制作サイドの工夫により、視聴者はまるで、そこにマイクもカメラもないかのように、男女の恋愛模様をのぞき込んでいるような感覚で番組を楽しみ、没入することができる。

視聴者は“リアリティー”を提供してもらっている

だが、その実態は、男女のデートをしているシーンを含め、ドラマの撮影のようにショットガンマイクと呼ばれる1メートルほどの撮影専用マイクを使って音を拾っている。つまり、その収録の様子は、大勢のスタッフに囲まれてシーンを撮影するドラマ撮影となんら変わらないのである。