死者数をとどめた背景には、統制とデジタル技術があった

医療現場ではAIを使った画像診断システムが威力を発揮した。肺炎の診断に使われるCTは1回の撮影で数百枚の画像が生成され、医師の判定には数時間かかる。武漢の病院に持ち込まれたYITUのAI画像診断システムはこれを数秒に短縮した。

倉澤治雄『中国、科学技術覇権への野望 宇宙・原発・ファーウェイ』(中央公論新社)
倉澤治雄『中国、科学技術覇権への野望 宇宙・原発・ファーウェイ』(中央公論新社)

ほかにもドローンによるパトロール、無人配達車による自動配送、音声認識技術を使った問診ロボットなどが投入された。新型コロナウイルスによる感染を封じ込めるため、中央政府と地方政府は感染者情報、交通機関情報、医療リソース情報などを提供、アリババ、テンセント、百度バイドゥ京東ジンドン、ファーウェイなどの先端企業がそれぞれのプラットフォームで情報を可視化して、二次感染、三次感染を防いだのである。

ほぼ全土に広がった都市の封鎖や交通規制によって、仕事はテレワーク、授業はオンライン、買い物はネットショップ、食事は出前、医療は遠隔診療となり、パトロールにはドローンが導入された。人口14億人の中国で死者が数千人にとどまった背景には、中国共産党による有無を言わせぬ統制とともにデジタル技術の存在があったのである。

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