コロナ封じ込めに立ち上がったIT事業者たち

デジタル技術は2019年末に中国・武漢市で発生が確認された新型コロナウイルスとの闘いでも威力を発揮した。中国国内で事態の深刻さがはっきりと認識されたのは2020年1月20日のことである。この日武漢に派遣されていた感染症研究の第一人者鐘南山氏が、テレビで「ヒトからヒトへの感染が起きている可能性がある」と語った。鐘南山氏は2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)を抑え込んだ国民的英雄である。

中国政府は直ちに医療関係者の大量派遣や臨時病院の建設を決定する一方、アリババ、テンセントをはじめとする中国のITプラットフォーム事業者が感染封じ込めに立ち上がった。

医療系ベンチャー企業の「丁香園」は感染者数と地域分布をWeChatの公式アカウント上で可視化した。これに政府系メディア人民日報のデータが加わったことから、瞬く間にネット上で拡散し、利用者が急増した。「丁香園」はその後わずか数日で、医師による遠隔問診システムやデマ情報チェックサイトなどを立ち上げた。

武漢を脱出した約500万人の足取りを特定

春節前々日の1月23日、1100万都市武漢の封鎖が決まると、人口の約半分が脱出した。脱出者追跡に威力を発揮したのは監視システムの「天網」と「雪亮」だ。2月12日付の南華早報電子版は、監視システムが武漢を離れた約500万人の足取りを特定したと伝えた。

2月11日、アリババの本拠地、浙江省杭州市では「支付宝健康コード(アリペイ健康コード)」がリリースされた。わずか1週間で全国100都市以上に広がり、3月半ばには200以上の都市に広がった。人民網によると「アリペイ健康コード」はいわば個人の健康状態を証明するデジタル証明書だ。

ユーザーがアプリで個人情報と健康状態、移動情報を申告すると、公的機関が持つデータと照合されて、感染のリスクが緑、黄色、赤のQRコードで表示される。緑の表示は通行可能、黄色は7日間の隔離、赤は14日間の隔離である。隔離が正常に終わると緑に変わる。都市間の移動や公共的な場所への出入り、高速道路での通行などで許可証として使われるほか、感染者が出るとたちどころに濃厚接触者が特定される仕組みだ。