当時のカイロ大学生や現在の大学関係者らを取材した

相反するかのように見える記述を検証するため、当時のカイロ大学生や現在の大学関係者らを取材した。まず応じてくれたのは、小池氏と同じ時期にカイロ大文学部に通ったエジプト人男性だ。当時、カメラを持っている人は少なかったが、この男性は小池氏が同級生とよく撮影していたことを覚えており、「時々、日本語の歌を歌ってくれた」と目を細める。この男性によると、カイロ大には入学式や卒業式はなく、その点は小池氏が著書などで明らかにしてきた点とも符合する。

ここで細部に入る前に日本とエジプトの大学制度の違いについても触れておきたい。カイロ大は現在、9月の第3土曜日にスタートしているが、かつては「10月入学―7月卒業」だった。小池氏は76年10月に卒業しているが、この卒業時期の違いは「1年生の時から落としていた科目は4年生になってパスすれば良いことになっており、そのための追試が行われる時期。通常は9月までに試験を行い結果が出る」(カイロ大関係者)という。小池氏は18年6月の都議会で「最終的には追試を経て、卒業に必要な条件を満たした」と答弁し、卒業までに必要な科目を追試でクリアしたと説明している。同大関係者によると、卒業はまず学部で追試後速やかに決定し、その後に一定期間を経て大学としての正式決定をする流れという。
 

大学の記録にも「76年10月卒業」

では、卒業関係書類のスタンプやロゴが他の卒業生のものと違う点はどうなのか。一部からは、割り印としてのスタンプが不鮮明であることや卒業証明書が「男性形」で書かれていることなどが不自然との指摘もある。この疑問に答えたのはカイロ大の幹部も務めた男性だ。「昔、小池氏が国会議員になる時や閣僚になった時など日本のメディアから問い合わせがあった。念のため大学の記録を調べたが、間違いなく小池氏は76年10月に卒業していた。そのことを回答してきたから、もう日本の大手メディアは小池氏の大学卒業について報じていない」と説明する。その上で、卒業関係書類については「実際に記録を見た人間が言えるのは、学部や時代によってスタンプやスタイル、サインが違うということだ。数年ごとにそれらを変えていることを知らない人間が勝手に間違えていることを言っているのだろう」と指摘する。

スタンプは盗難対策などのため定期的に変更しているといい、別の同大関係者は「卒業関係書類は昔は男性形の1つのフォーマットを使い、手書きやタイプライター。ピンで留め、大学職員が何人かで手作業でスタンプを押していた。今はさすがに男女の違いはあるが、多くの学生に書類を作成するのは大変な作業で、多少異なる点があるのも当たり前」と解説する。