あえて雨の日、警察官の家にいく理由
まず、初めに新人記者がやらされるのは夜討ち朝駆けだ。警察官の出勤前と帰宅時に家まで行って、"非公式"な話を聞きにいく。警察官にとっては迷惑な話なのだが、そこは体育会系の集まりだけあって、案外これが効く。雨の日にブルブルと震えながら家の前で待っている健気な新人記者を見たら、義理人情に篤い警察官は「何が知りたいんや、言ってみぃ」とついつい心を開いてしまうのである。
本当は直前まであったかいタクシーの中で待機し、目当ての警察官が遠くに見えた瞬間に家の前までダッシュしていたのかもしれないのに。あえて傘をささずに濡れている感を出すというバリエーションもある。とある記者は警察官が見えた瞬間に用意しておいたペットボトルの水を頭からかぶるそうだ。
そうやって、警察官と仲良くなる。そして頑張る新人はさらにその上を目指す。その警察官の家にあがり、奥さんにご飯をご馳走してもらい、風呂も使わせてもらう。そこまで新人記者が警察官と関係を深められたなら大したもんだ。○○支局にすごい新人がいると社内で必ず噂がたつ。
とある女性記者の手帳にズラリと警察官の名前が書きこまれていた。誕生日を忘れないようにメモっていたのだ。そして彼女はバレンタインデーになったら警察官にチョコレートを配っていた。もちろん良いネタをくれる警察官には自宅まで“本命”を渡しにいく。
癒着の領収書、いくらでも切れる
ある程度関係をつくってしまえばこっちのもんだ。堂々とメールやラインで捜査情報をくれる人もいるが、警察署のタバコ部屋でわざとらしく「ちょっとトイレいってくるわ」と捜査資料だけおいて出てくような人もいる。そうやって警察官をネタモトにし、新人記者は権力と癒着できる“新聞記者”と成長していくのだ。
東京新聞のエース記者である望月衣塑子氏も今でこそ、政府を激しく批判し続けているが、もともと東京地検担当。入社4年目にして日歯連の汚職事件を当局からすっぱ抜いた。そもそも東京地検担当なんて地方支局でしのぎを削ってきた各社のエースが集まってくる。そこで他社を圧倒するスクープを打ったのだから、それは、それは、大変な「努力」をしたのであろう。
大阪府警のとある警察官は、懇意にしている新聞社と月に一度はごはんに行く。担当記者は「新聞社のことを財布だと思って、焼肉やらキャバクラやら、好きなところ連れてかれますよ。それでもネタを定期的にくれるので、領収書は取材経費としておちるんですよね」と説明する。警察官の愛人がやっているスナックも定番コースに入っていて、ママからは毎回法外な金額を請求されるそうだが、それももちろん領収書を切れる。記者と権力の癒着が完成すれば、あとはいくらでも金銭サポートを会社がするわけだ。