天才プログラマーを「デジタル担当」に抜擢した台湾
政府のDX化で、ここにきて俄然注目されているのが台湾である。2016年に、天才プログラマーと言われたオードリー・タン(唐鳳)氏を35歳の若さで、閣僚級の「デジタル担当政務委員」に抜擢。タン氏は、インターネット上にあらゆる情報を置き、政府の大臣や官僚が何を考えているか国民が知ることができるようにする徹底した情報公開に踏み切った。また、ネットで国民の知恵や意見を集めることで、問題解決にも取り組んだ。こうした人材のネットワークによって、今回の新型コロナ問題でも、マスクの配分システムなどをいち早く作るなど成果をあげているという。
日本政府は2019年6月14日、「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」を閣議決定した。その中で、これまでのIT戦略の歩みについてこう述べている。
「政府CIOがIT政策の統括者となり、府省庁の縦割りを打破して『横串』を通すことにより、政府情報システムの運用コストの削減やデータ利活用の促進など、着実な成果を積み重ねてきている」
だが、「自画自賛」にもかかわらず、役所のDX化は進んでいない。DX化を進めるには情報開示が不可欠だが、霞が関は伝統的に情報開示に消極的だ。
パンデミックで政府が機能停止しないために
ちなみに基本計画で触れられている政府CIO(最高情報責任者)の正式な日本語名称は「内閣情報通信政策監」。官僚トップである内閣官房副長官の半格下の高級ポストである。台湾のタン氏と同じ役割を日本政府CIOも期待されている。
このポストには、現在は大林組の元専務で情報システム担当などを務めた三輪昭尚氏が就任している。さすがに民間からの採用だが、タン氏(現在39歳)と大きく違うのは年齢。高級ポストにはふさわしいということだろうが、三輪氏は68歳だ。しかも、CIOの下に置いた各省庁のCIO(情報化統括責任者)は幹部官僚の兼務。ITに詳しいわけではない。むしろ、従来の仕事の仕方の中で偉くなってきた人たちだ。
今回の新型コロナの蔓延を機に、政府部門の仕事の仕方が根本から変わることを期待したい。今回は「三密」覚悟で役所に詰めて対応できているが、新型コロナよりもさらに猛烈なウイルスがパンデミックを起こすことも十分あり得る。その時、政府が機能停止しないためにも備えが必要だ。今回の「失敗」を率直に反省してDXを進めることを期待したい。