なぜ百合子マスクは批判されないのか
一方、同じ布製マスクでも、小池百合子東京都知事が着用している通称「百合子マスク」は好意的に受け止められ、会見のたびにSNSで話題となっている。ツイッターでは「#百合子マスク」というタグもでき、小池都知事のマスクについての感想や自作のマスクが多数投稿されている。都知事のマスクに注目している人だけでなく、影響を受けて自身でも手作りしようという人も多いようだ。
都知事が初めて布製のマスクを身につけて公の場に姿を現したのは4月7日、安倍首相の緊急事態宣言を受けて開かれた会見だった。白地にパステルカラーのフラッグ(旗)柄があしらわれたもので、柄が逆さまになっているのが手作りらしさを醸し出していた。
都知事はマスクが使い捨てのものではないことを指摘され、「今日の私のマスクは手作りで近所の方からお届けいただいたもの」と答えている。
以来小池都知事の布マスクはトレードマークのようになり、いつしか「百合子マスク」などと呼ばれるようになった。デザインのバリエーションも豊かで、波模様やハート模様、5月1日の定例会見では初夏を意識してか外側にレース生地があしらわれたものを身につけていた。
百合子マスクが担った「啓発」の効果
都知事のマスクを見て「自分も作ってみよう」と決意した人も少なくないのかもしれない。マスク不足が続くなか、手作りマスクを作る人も増えている。それに伴ってマスクの材料となる生地やゴム、ミシンの需要も大きく拡大しているという。
改めてアベノマスクと百合子マスクを比較してみると、同じ布マスクでもその違いは歴然としている。
まず大きな違いはその機能性だ。アベノマスクが昔ながらの布マスクでフィット感やサイズに不安があるのに対して、小池都知事が身につけているのは手作りながら立体的な縫製で、一般的な使い捨てマスクのように顔にフィットする作りになっている。
厚生労働省が示す正しいマスクの付け方のとおり、鼻の形に合わせ隙間をふさいだ上でマスクを下まで伸ばし顔にフィットさせているのがポイントだ。小池都知事が身につけているマスクは顔の半分近くをすっぽりと覆っている。
柄や生地といった趣向も見逃せない。もちろんマスクの柄は感染予防の機能とは関係がないが、気が滅入ることばかりの日々でマスクという新たなお洒落アイテムが少しばかり気を晴らしてくれることもあるかもしれない。
また、都知事のマスクを見て自分もマスクを手作りしようという人が増えているのならば、少なくとも「啓発」としての効果はアベノマスクより遥かに大きかったと言える。