満員電車で口臭のする人の近くにいると、これはもう大変。吐き気が起きないように頑張るしかない。歯磨きが徹底している今日でも、口臭のする人が多い。それだけでは病気ではないが、口が臭いと本人が悩むと、これは「口臭症」という立派な病気である。

口臭症には「他臭症」と「自臭症」の2つがある。

他臭症は他の人から口臭を指摘され、過剰に気にしている状態。一方、自臭症は周囲の人は口臭がするとはまったく思っていないのに、自分自身、口臭がすると悩んでいる状態である。

歯科病院に口臭外来を設けているところがあるので、まずは、その外来を受診するのが最も適切である。

問題となる口臭の原因は5点あるといわれている。(1)虫歯、(2)歯周病、(3)歯の根尖(こんせん)の病気、(4)舌苔(ぜつたい)、(5)鼻・消化器などの病気である。

虫歯があると食べ物のカスが残り、それが発酵して口臭になる。歯周病は歯肉からの出血が口臭のもとに。また歯の根のところの根尖に膿がたまると、やはり臭う。それらは歯科医が口腔内をチェックすると一目瞭然。原因を治療すると治ってしまう。

舌にできる白色や黄色の舌苔による口臭は、唾液量の減少による。「唾液量検査」を行って唾液量が少ないと、体のさまざまな分泌液が出なくなる「シェーグレン症候群」か、唾液だけが減少する「ドライマウス(口腔乾燥症)」か、そのほかに原因があるのかを調べる。

ドライマウスであれば、ガムをよくかむなどによって唾液を増加させるようにするとともに、水分をこまめに摂取するようにする。もちろん、ブラッシングのときに舌もブラッシングするようにして舌苔をおとす。口腔内の保湿スプレーなどの使用も有効。

鼻・消化器などの病気も口臭に結びつくので、この場合は内科の協力を得てチェックする。腎臓病ではアンモニア臭がするといわれている。

以上は多くが他臭症の人に対応するもので、自臭症の人の場合は「口臭測定検査」を行っても、まず異常値を示さないことが多い。

自臭症の治療の中心は「カウンセリング」と「薬物療法」。精神科と協力しながら治療を行うところが多い。

カウンセリングでは認知療法を行う。患者に自意識過剰を自覚させ、思っているほど他人は気にしていないことを認識させるのである。現実的なものの見方を身につけるように援助する。

薬物療法で用いられるのは、自臭症の原因には不安神経症といった精神的疾患があるので「抗不安薬」。薬の力をかりてゆったりした気持ちにさせるのである。

さらに、職場の人々や家族の協力を必要とすることもあるという。

 

食生活のワンポイント

口の中に原因がある場合は、歯と歯茎、そして舌苔のブラッシングが大きなポイントとなる。

その次に重要となるのが食生活である。

(1)ガムをよくかむようにする!
 ガムをよくかむと体がリラックスするとともに唾液も出やすくなる。唾液が多く出ると虫歯予防にもなるし、ドライマウスも防ぎ、口臭を抑えてくれる。

(2)食事はひと口30回以上かもう!
 よくかむと唾液が多く出て、食べ物がよくまざるため食道から胃へ流し込みやすくなる。胃腸の健康にもよい。

(3)バランスのよい食事!
 3食を規則正しく食べ、さらに、栄養のバランスをよくする。疲れが残らないようにすることで胃腸を元気に保つ。

(4)レモンや梅干しで刺激!
 酸っぱい物は唾液分泌をよくする。

(5)禁煙!
 タバコはそれ自体が口臭の原因になる。