“日本人は胃腸の弱い国民”といわれている。それを裏付けるDIGEST(Domestic/International Gastroenterology Surveillance Study)の調査報告によると、日本人の4人に1人が胃の問題症状を3カ月に1回は経験している。そのうち、3人に1人が医療機関を受診。しっかりと内視鏡検査を受け、半数にあたる約50%が食道、胃、十二指腸などにはまったく問題なく、「機能性胃腸症」と診断されている。

かつては慢性胃炎、神経性胃炎、胃アトニー、胃下垂などと診断されていたものも、その多くが機能性胃腸症だったのである。

機能性胃腸症の定義は、「最近3カ月間に食後のもたれ感、早期飽満感(すぐに満腹になる。それも食事中に食欲がなくなること)、上腹部痛、上腹部灼熱感(胸やけなど)の4つの症状のうち、ひとつ以上の症状があること。さらに、上部消化管内視鏡検査などを行って、器質的な疾患が認められない」となっている。

つまり、音はすれども姿は見えず、と同じ状況で、「症状はあれども疾患が見えない」。胃の運動機能の低下が原因とされ、タイプは3つに分けられている。

・運動不全型……胃もたれなどの症状が中心となる。
  ・潰瘍(かいよう)型……胃の痛みが強く出てくる。
  ・非特異型……運動不全型と潰瘍型のどちらの症状も出てくる。

日本人に最も多いのは運動不全型で、機能性胃腸症の約60%を占めている。

検査の中心は「上部消化管内視鏡検査」になるが、そのほかの原因も考えられるため、「上腹部超音波検査」「尿検査」「血液検査」なども行われる。

機能性胃腸症と診断し、その病気を説明するだけで、症状が数日で消える人もいる。とりわけ、胃ガンを疑って受診した人などは、その大きな不安が消えただけで薬も必要としないことも多いという。

治療は薬物療法を中心として、それに生活習慣の改善を加える。

運動不全型には運動機能を改善する薬である「モサプリド」や「イトプリド」を服用。さらに胃はストレスと大きく関係しているので、抗不安薬を使うこともある。潰瘍型には胃酸の分泌を抑えながら胃の運動をよくする「H2ブロッカー(ヒスタミンH2受容体拮抗薬)」「ニザチジン」「ファモチジン」などを使う。

生活習慣は適度な運動、ストレス解消、十分な睡眠、そして、食生活によって改善する。

 

食生活のワンポイント

食生活も大きな要因のひとつなので、これまでの食生活の悪しき習慣を改善するようにしよう。

(1)朝食は抜かずに、1日3食を規則正しく食べる!

(2)よくかんで、ゆっくり食べ、腹8分を心がける!

(3)刺激物は避ける!
とうがらしやカレー粉などの刺激物、また、冷たすぎる、熱すぎるといった“すぎる”もの、炭酸飲料なども控える。これらは胃の運動の低下や胃粘膜の刺激に結びつくからである。

(4)消化によいものを食べる!
消化に悪いのは脂肪分の多いものや硬いものなど。特に胃もたれ感が強い運動不全型の人は、より消化のよいものを選択しよう。野菜、タマゴ、豆腐、牛乳、魚、鶏肉のささみなどは消化がいい。焼く、煮る、ゆでる、蒸すといった手間をかけ、消化のよい状態で食べよう。

(5)食後はゆっくりする!
食後、胃に十分血液が流れて胃がきちんと働くには、食後30分から60分はゆっくり休む必要がある。

(6)禁煙と適度な飲酒を心がける!
酒は飲まなければ飲まないにこしたことはない。飲む場合は日本酒なら1合、ビールなら中ビン1本程度に抑え、空腹時にはアルコールは飲まないようにする。