Bさんは就活を始めた時点で多数の企業からオファーを受けていて、就職した企業も彼に熱心なアプローチをしていました。慶應卒で宅建(宅地建物取引士)の資格を所有し、大手不動産での経験もあるとなれば、MARCH以上がスタンダードな同社役員陣にとって喉から手が出るほど欲しい人材だったのです。また、本人もどこへ転職しても稼げる自信がありましたし、現に実績を上げていきました。

ただ、それ以上に稼ぎ、役員やお客様から信頼を獲得したのはAさんだったのです。

初めて会った日のAさんは「本当に就職する気があるのか?」と疑いたくなる態度で、しかも遅刻してきました。それでいて「とにかく短期で大きく稼ぎたい!」と、言うことだけはいっちょ前。

そこで私はAさんに「20代で年収1000万円以上の人は数えるほどしかいない。その現実のなかで、どうやって稼ぐつもりなの?」と聞きました。Aさんは投資に興味がある、と答えましたが、投資の勉強すらしたことがありませんでした。

またAさんは、会社員経験がない時点で同年代に後れを取っているにもかかわらず、茶髪でロン毛。真面目に就職を考えているとはとうてい思えない風貌で来訪してきました。

この時点では、自分の置かれている状況や立ち位置をまったく理解できていなかったのです。現実と自分の市場価値を知らなければ、面接で信用を得ることはできません。

私はAさんに「次回は就活できる身なりで来てください」と言って、その日は終わりました。

2回目の面談日、Aさんはちゃんと約束を守り、就活に相応しい身なりで来てくれました。当たり前と思われるかもしれませんが、この約束を守れない人は一定数います。俳優志望でスーツ姿とは縁遠い風貌こそが自分らしさだったAさん。就活のためにそのポリシーを捨て、新しい道を生きる決断をしてきたのです。

後で聞いた話ですが、Aさんは私が言った「決断とは『決めて断つ』こと」という言葉で、新しい道へ進むために俳優の夢を断つと決意したそうです。

Fラン卒がここまで化けた!

Aさんの並々ならぬ決意を感じた私は次に、稼ぐために「断つこと」を決めるようにアドバイスしました。学歴や経験で勝負できないのであれば、自分にできることで誰よりも頑張る必要があります。そのためには生活の何かを犠牲にしなければ、人以上の働きはできません。

まずAさんは、自分の時間を断つと決めました。遊ぶ時間を仕事に使う決意をしたのです。

自分の市場価値とPRポイントを確認できたら、ようやく希望条件に合う企業探しに入ります。