生理用品も交換できず、運転席に座りっぱなし

——著書では、生理用品を取り換えられず、座布団を汚してしまったという女性ならではのエピソードもありました。

生理も女性トラックドライバーならではの悩みです。トイレに立ち寄れなければ生理用品を交換できない。生理期間中はモヤモヤした状態でずっと座らなければなりません。正直、とても苦痛でした。昼夜問わず、常に長時間使える夜用のナプキンを使用していましたが、交換が間に合わず、トラックの座席を血で汚してしまったこともあります。

200kmほど離れた得意先まで、休憩を取れず大急ぎでトラックを走らせた時の話です。搬入先に到着し、トイレに寄る間もなく荷降ろしの順番が来て呼ばれたんです。けど、どう考えても車を降りられる状態ではありませんでした。

周りは男性ばかりで事情も話せない。その時は「なんでこんなことをやっているんだろう」って虚しい気持ちに陥りましたね。

いつの間にか黒い服ばかり着るようになった

——この点、女性と男性の大きな違いですね。

私が乗っていたのは「平車」「平ボディー」と呼ばれる車種です。荷下ろしの時は、私がトラックの荷台に乗って、運んできた金型にフックをかけてクレーンで運ぶ作業をします。

元トラックドライバーの橋本愛喜さん(撮影=プレジデントオンライン編集部)

荷台に乗るには片足をタイヤにかけ、もう片足を広げて上がらなければなりません。その感覚って、屈辱とまでは言いませんが、ものすごい違和感がありました。

というのも、その時ちょうど私のお尻のあたりが下で待っている荷主さんの目線の先に来るんです。女性しかわからないと思いますが、荷物を持つ動作で血がドッと出たりします。「服が汚れていたらどうしよう」と気がかりで、毎度「そこに立たないでー」と思っていました。

荷主さんの中には、高い荷台から降りる際に私が足を滑らせないかとトラックの下でひたすら待ってくださる方もいて……。優しさとは重々分かっていたんですが、こういう理由から実は苦手でした。

だから今でもエスカレーターや階段など、段差のある場所で男性に後ろに立たれると気になってしまいます。白色の洋服は絶対に着ないようになりました。今日も黒色のパンツです。いまでも濃い色の洋服ばかり。洋服が汚れてもバレないように……その時の名残なんです。

「女なんて寄こすな」「娘なんて寄こすな」

——生理中だと、そもそも働く事自体つらく感じますよね。

そうですね。体がだるいし、荷物の持ち運びはとてもしんどいです。私は生理痛がひどい方なんですが、当時は鎮痛剤が飲めなかったのはしんどかったですね。運転中、眠くなってしまうから……。