雇用者の「4割近く」が無収入の危機

パートやアルバイトが多く働く飲食店などが今回の外出自粛要請で、いち早く大打撃を受けている。売り上げが減少するどころか、客が来ずに売り上げが「消滅」しているところもある。このままでは月末に支払う家賃や給料にも事欠くところも少なくなく、真っ先にパートやアルバイトが雇い止めになっている。

通常時ならば、客がいないからバイトを休ませたり辞めてもらったりするのは飲食店などにとっては普通の対応である。もちろん、時給制で働いているバイトやパートの人たちは、仕事ができなければ即刻収入がなくなる。

総務省の労働力調査によると2月時点の非正規従業員は2159万人。役員を除く雇用者全体の38%に達する。そのうちアルバイトが477万人、パートは1059万人にのぼる。そうした人たちが、収入が無くなる危機に直面しつつあるのだ。

厚労省の公式ツイッターに多くの人たちが反発したのは、パートやバイトも雇用調整助成金の対象になるからクビにするなと言われても、雇用調整助成金という名前すら知らない零細事業者は少なくないのが現実だからだ。たとえニュースで聞いたとしても申請書類など書いたこともなく、そんな時間もないという事業者は多い。

役人にとっては「簡単な申請書類」だが…

加藤勝信厚労相は、問題の公式ツイートに先立つ4月10日、雇用調整助成金の申請手続きを大幅に簡素化することや、申請から支給までに2カ月かかっていたものを、1カ月で済ますよう「取り組んでいく」方針を示した。ツイートした官僚からすれば、自分たちは必死にやっているのに批判されるのはたまらない、ということなのだろう。

ちなみに、雇用調整助成金の申請書類は、確かに大幅に簡素化された。役人からみればこれ以上の簡単な申請書類はない、と言いたいところだろう。だが、ホームページで見ると、記入する書類にはいきなり「判定基礎期間」なる役所用語が出てくる。もちろん、別のところに説明書きはあるが、ペーパーワークをほとんどしない人は面食らうだろう。

また、今回の休業とは直接関係のない「教育訓練内容」を書く欄も同居している。日頃申請書類など書いたことがない人にとっては、取っ付きにくい書類だ。しかも通常通り申請代理人欄があり、分からない申請者には、社会保険労務士を使えと言っているかのようだ。

残念ながら高級官僚には現場の実情はなかなか分からないのだろう。役所の中の前例やしきたりが優先するから、申請する側の立場など考えることもない。現場の声を報じるメディアに対しても、無用の非難を浴びているような錯覚に陥る。