野党からは減税法案を作成に取り掛かる議員も
そのため、国内世論を喚起するために必要となるのは野党の積極的な動きである。野党が消費税減税を与党に強烈に迫ることによって、与党は重い腰をようやく上げることができるだろう。しかし、野党第一党である立憲民主党は枝野幸男党首が消費税減税に後ろ向きの姿勢を示しており、こちらも一筋縄に行きそうにない。国民民主党は消費税を5%まで引き下げる案を示しているが、旧民進党から分かれた2つの政党は消費税減税を推進する主体としてやる気もパンチも足りない。
注目すべきは、日本維新の会とNHKから国民を守る党の動きだろう。日本維新の会では音喜多駿参議院議員が8%までの減税を軸にした法案作成に取り組んでいる。日本維新の会は元々法案作成に熱心に取り組む傾向がある政党だが、消費税減税法案が仮に策定された場合、国民からもその政治姿勢に一定の注目が集まることになるだろう。また、NHKから国民を守る党(参議院所属会派はみんなの党)の浜田聡参議院議員も少数会派ながら参議院法制局と協力し、5%まで下げる減税法案の骨子を発表している。いずれも少数会派による法案作成作業であるため、国会での審議はもとより、議員立法提出要件を満たさない可能性はあるものの、政府与党に対する対案を示すその政治姿勢は評価に値する。
このまま解散したら、与党は敗北する
現在の日本に必要な存在は、日本経済の厳しい経済見通しを理解し、政府与党に対して本気で政権交代を迫ることができる健全な野党の存在である。政府与党は自らの地位を脅かす可能性がある野党が存在しない場合、幾らでも経済対策の手綱を緩めることができる。与党を脅かす力強い野党が存在しないことが第1次補正予算による一律給付の見送りにつながり、消費税減税をはじめとしたアフターコロナを見据えた政策の実現を阻害している。
政府与党が消費税減税に踏み切るためには、可能な限り全ての野党が独自の消費税減税法案を提示し、政府与党だけが消費税率維持を主張しているように見える政治環境をつくることが必要だ。立憲民主党も自党以外の全ての野党が消費税減税法案をとりまとめた場合、従来までの税率維持方針を貫くことができるかは不明だ。
政府与党が消費税減税に踏み切るか否かは、世界経済・日本経済の見通しもしかることながら、消費税減税に向けた政治的な圧力が高まることが必要だ。それに言及することなく解散総選挙に踏み切った場合、確実に与党が敗北する状況が出来上がることで、政府与党は初めて消費税減税に本腰を入れて取り組むようになる。