コロナ以前に消費増税で日本経済はボロボロ

本年のGDP見通しは世界中で大幅なマイナスとなっており、新型コロナウイルス感染の拡大が引き起こした各国の政府の過剰な対応策により、事実上の世界恐慌が人為的に引き起こされた状態だ。しかし、来年春に新型コロナウイルスに対するワクチンを含む治療法が確立することを前提とした場合、その後は世界経済全体が回復基調に向かっていく可能性も十分に想定される。一度どん底に突き落とされた後に、経済が徐々に回復していくことは必然的なことだろう。

しかし、日本がその世界経済の回復基調にうまく乗ることができるかどうかは疑問である。理由は、日本経済は消費増税によって新型コロナウイルス問題が発生する以前に、すでに足腰が砕けていたからだ。そのうえで、さらに新型コロナウイルス問題に伴う経済危機が襲ったことで、多くの優良な企業が急場をしのぎ切れずに潰れていくことになるだろう。そのため、アフターコロナを見据えた産業競争力の維持・立て直しに付いていけず、日本は極めて不利な立場に置かれる可能性がある。

国民が最も望む消費減税を徹底無視する安倍晋三

4月14日・15日に自民党の二階俊博幹事長および公明党側から相次いで、首相官邸に対して国民に一律給付金10万円を支給する要望が上がった。これに対して安倍晋三首相は前向きな発言を行った。災害時の一時金支給に近い形を取って消費を喚起するための政策としてはよいものだと思う。しかし、これはあくまでも一時的な措置にすぎず、日本経済に昨年10~12月四半期実質GDPで前年比マイナス7%超えの影響を与えた消費税を引き下げることは急務だ。

政府与党内では一部の若手有志による消費税減税の声はあるものの、政権幹部からは消費税減税に関する前向きな見解は一切示されていない。むしろ、第2次補正予算に一律給付金が盛り込まれることで、消費税減税がうやむやにされて終わってしまう可能性すらある。世論調査上で日本国民が回答する経済対策の圧倒的1位は消費税減税であり、安倍政権よりも国民のほうが日々の生活を通じ、現在最も必要な経済対策を理解していると言えるだろう。

アフターコロナに想定される国際競争環境に勝ち抜くための政治的な危機感の欠落は非常に深刻なものだ。そして、安倍政権は自らが2度の消費税増税に踏み切り、消費税率を5%から10%に引き上げた以上、自ら消費税減税を口にするにはハードルが高い。