図1:時間管理のマトリックス(例)
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図1:時間管理のマトリックス(例)

翌日、出社してその十字架の意味がわかった。以前、Iさんが私に教えてくれた「時間管理のマトリックス」だったのである。これはビジネスマン向けのセミナーを行っているフランクリン・コヴィー社が提唱する考え方で、仕事は、「重要かつ緊急のもの=第I領域」「重要であるが緊急でないもの=第II領域」「緊急であるが重要でないもの=第III領域」「緊急でも重要でもない=第IV領域」に4分類されるというものだ(図1参照)。

私はさっそくIさんに同社の副社長である竹村富士徳氏を紹介してもらい、アドバイスを受けることにした。

 「この時間管理のマトリックスの考え方を説明する前に図1の縦線と横線がなくなったらどうなるか、ということを考えてください。するとまず緊急性の高い仕事(第I領域)や、あるいは手のつけやすい仕事からどんどん片づけていくようになると思います。そうすると常に仕事に追われている感じが抜けずにストレスがたまり第IV領域に逃げ込むといった悪循環が続くことになってしまうのです」

図2:時間管理のマトリックス どんぶり男の場合(緊急中毒状態)
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図2:時間管理のマトリックス どんぶり男の場合(緊急中毒状態)

確かに、いまの私の状況をこの考えにならって整理してみると図2のようになり、竹村氏が言うところの「緊急中毒」になってしまっている。その反動で仕事から逃避するため、サウナやマッサージ店に駆け込む毎日が続いていたのだ。

 「そこで大事なことはまず第II領域に時間を投入することなんです。ここの仕事を15分でも始めるようになると、第I領域のストレスがずっと軽減されるのです。15分というのは1日の1%にあたりますが、その1%が残りの99%に影響を与えるのです」

竹村氏によれば、例えば歯が痛くなって歯医者に駆け込むのが第I領域だとすれば、定期的に歯の検診に通うのが第II領域なのだという。確かに平常時に検診に通っていれば、虫歯が悪くなる前に処置ができ、その結果、痛い思いもしないで済むし、コストも安く済む。

 「しかし、現状では単行本の出版も雑誌の校了も第I領域に突入しています」

 「その場合は少しでも時間が空いたら、本来第II領域であった単行本の仕事を少しでも前に進めることです。来週やる仕事の予定を今週済ませるようにしましょう。それだけで生産性は変わってきます」