日本人はなぜ、マスクを手放せなくなったのか。社会学者の堀井光俊さんは「大正時代、スペイン・インフルエンザが大流行したことでマスクが日本人に広がった。近年では花粉症の影響も大きいが、それだけではない深い理由がある」という——。
マスク姿の通勤客らの波が途切れることなく続く品川駅の自由通路。ただ、40代のシステムエンジニアの男性は「いつもよりも少し少ない。感覚では7割ぐらいじゃないか」と話した=2020年4月8日午前8時29分=東京都港区
写真=AA/時事通信フォト
マスク姿の通勤客らの波が途切れることなく続く品川駅の自由通路。ただ、40代のシステムエンジニアの男性は「いつもよりも少し少ない。感覚では7割ぐらいじゃないか」と話した=2020年4月8日午前8時29分=東京都港区

欧米で廃れ、日本で定着した「マスク文化」

新型コロナウイルスが世界的に広がり、マスク姿の人々が、中国において感染が問題化した初期からこの事件の象徴として世界中のメディアで取り上げられています。

日本でもマスクの品切れが話題となるほど、「コロナ不安」は人々をマスク着用へと駆り立てています。

あまり知られていないことですが、現代日本で広く行われている予防目的でのマスク利用の起源は、実は欧米にあるのです。スペイン・インフルエンザが大流行した大正時代、マスクの着用を義務付けた欧米を参考に、日本政府がマスクを紹介しました。

4月10日付の記事「これだけ言われても欧米人がマスク着用を嫌がる社会的事情」で紹介したように、現在、欧米でその利用法はすっかり廃れてしまいました。

しかし、日本ではマスクが定着し、世界有数のマスク大国になりました。本稿では、マスクの歴史を振り返りながら、日本人がマスクを手放せなくなった理由を紹介します。