県の失態を免罪符に「稼げるときに稼ぎたい」

直前の3月30日には達増拓也岩手県知事が首都圏と行き来した人に対して「2週間、不要不急の外出自粛」の要請を出したばかり。そのちぐはぐさが県民の不信感を生んだ。

「画像に手を入れるだけという対応も付け焼き刃に思えますが、県のなかでもろもろの調整が機能していないのではないか。業界内ですら、もはや県内の移動も抑制すべき段階なのではという声も聞かれます。

首都圏の同業者たちの悲鳴を聞くにつれ、稼げるうちに稼いでおきたいという気持ちは誰だってあります。今回の県の失態を免罪符のように話す人もいる。いったいどうすればいいのか……」

「疎開」は何も観光客に限らない。ほかの県同様に、大学生の帰省もリスクだが、帰省の場合、観光と違って「見えない疎開」になっているのだという。

「緊急事態宣言の前に感染者が出ていれば帰省は抑制されたかもしれませんが、現時点でどれだけ大学生が帰ってきているか、想像もつきません」と危機感をあらわにするのは、ある自治体職員だ。

マスクをしていない県民多く……

ほかの県でも帰省先にウイルスを持ち込んだ学生がバッシングを受けているが、岩手は人口密度が北海道についで低く、家屋も3世代同居が当たり前のサイズ感。つまり、やろうと思えば、家のなかで無理なく自主隔離が行える。

「そんな環境なので、学生本人がその場に残る意思があっても、『いいから帰っておいで』と家族に説得されているのではないかと戦々恐々です」

今回のウイルスについてはまだ明らかになっていない部分もある。岐阜市ではエレベーターを介して感染が拡大した疑惑も出ている。

「他県でのバッシングを知っているから、帰省させたことを家族は周りに言わない。十分に気をつけていたとしても、同じ屋根の下、どこかで家族が感染してしまうかもしれません。3世代同居であれば、祖父母は当然高齢なので、それも気がかりです。

また、県下で感染は確認されていないため、県民の防疫意識も決して高いとはいえず、マスクをしていない人を多く見かけます。学生から家族に、家族が職場に、と感染が拡大する恐れもある。最悪なのは、家族が感染を隠そうとしたときでしょう」

鳥取・島根で感染確認。「正直、最後にはなりたくなかった」

いつ感染者が出てもおかしくない状況にありながら、今まで“生き残った”からこそ危機意識が醸成されてこなかった。この職員に限らず、複雑な心境の自治体関係者は少なくないという。

「今日(10日)、鳥取で感染が確認されたことを聞き、残業していた同僚と顔を見合わせました。不謹慎ですが『最後にはなりたくないよね』と話していたんです。

鳥取・島根・岩手のうち、鳥取は別格ですが、島根も岩手も対応できる医療機関はごくわずか。なのに、県内のあちこちで火種がくすぶっているかもしれない。県民の心構えができあがる前に、同時に火を吹けば最悪です。