世界が日本の現金給付策を厳しく指摘するワケ
海外メディアの報道では、今回のわが国の現金給付策に関して厳しい指摘が散見される。また、人の移動制限が十分ではないとの不安も示されている。人の移動が十分にコントロールされていない状況下、感染の拡大を食い止めることは難しい。その中で財政政策を用いて現金給付などを行っても、需要創出の効果は出づらいだろう。
さらに、わが国の現金給付は世帯を対象としている。一方、欧米では現金給付に加え、雇用維持のための支援、ローンの支払い猶予措置など幅広い対策が迅速かつかなりの規模感で実施されている。支援対象の選定方法や方策を比較すると、金額の大きさで勝負した感が強いわが国の現金給付がどの程度の効果を発揮するか不透明だ。
英国のスナク財務相は、経済対策の実施に関して「誰一人取り残さない」と発言した。そのように為政者には国民一人ひとりに寄り添うようにして政策を運営する姿勢が求められる。言い換えれば、国内の多様な利害を調整しつつ、よりきめ細かに事業者や家計への支援措置を策定しなければならない。
わが国で仮に緊急事態宣言が延長されれば、実体経済と金融市場への影響は深刻化するだろう。事態が厳しさを増すのはこれからと考えるべきだ。影響を可能な限り小さくするためには、より多くの国民が納得し、できるだけ公平感を感じることのできる経済対策の立案が欠かせない。現状の経済対策に関する議論を見ていると、政府は各都道府県の利害をうまく調整できていないようだ。
この深刻な状況で求められるのは政府のリーダーシップ
新型コロナウイルスは、1918年から世界全体に拡大したスペイン風邪に匹敵する可能性がある。一部では2020年後半には米国経済がV字回復を遂げるとの見方もあるが、人の動線が遮断されている中、世界各国の景気はかなりの停滞に陥る恐れがある。
今後、各国の政治・経済・市民生活はより深刻な状況に直面するだろう。政府は、そうしたシナリオを念頭に置いた上で、緊急経済対策の内容が人々の不安を和らげることになるか否かを多角的かつ冷静に考え、より多くの賛同を得なければならない。その意味で、政府のリーダーシップが問われている。