中国人にとって、彼女の魅力はどこにあるのだろうか? 本人に直接、尋ねてみた。

「うーん、いひひひー」と、とても芸能人とは思えない笑い声を上げた後、「私も知りたいんですけど。何でしょうね?」と首をひねった。屈託がない。

――中国の反日感情を解くにはどうしたらいいと思いますか?

「日本人も中国人もお互いを知らない人が言っていると思う。日本に行ったことがない人、日本に友達がいない人が言っていると、すごく感じます。交流してみれば分かることもたくさんあるのではないかと思います」

彼女自身は、中国での活動で、日本人だからといって仕事をしにくいと感じたことは「一切ない」と話す。

――人気のある蒼井さんだからこそできることがあるのでは?

「あるんですかねー? よく周りから言われますけど。自分は中国語を覚え中国語で交流していくのを大切にしたいと思っています。まずはそこからだと」

拙い中国語、気取らない身近さ……

本人の言葉通り、ウェイボーでの「つぶやき」は、彼女自身が中国語を駆使して投稿している。

「ニキビができたー」とふくれ面の自撮りや、「上海ガニ食べたー。食べ過ぎたー」とどアップのカニの写真。我々と何ら変わらない他愛のない日常生活が、拙い中国語のつぶやきから伝わる。気取らない身近さが彼女の魅力と言えそうだ。

「私が日本人ということで、少しでも日本に興味を持ってくれる人がいるならありがたいと思います。もっと興味を持って文化や、今の日本みたいなものを知って欲しいと思います。私、中国に来た時に自転車がいっぱいいると思っていたんです。それは小学校の教育だったんですけど。実際は、北京に関しては全然そんなことはなかったです。それと同じで、実際に見て感じたら違うんじゃないかな、と思います」

なぜ、中国人に愛されているのか

中国最大の経済都市・上海には、世界中の資本と同様に日本企業も数多く進出している。繁華街で不意に日本語の会話が耳に飛び込んでくるということもまれではない。在留日本人は4万3000人以上。上海に住む中国人にとって、日本は比較的身近な存在である。

ちなみに中国に縁のない人はあまり意識していないかもしれないが、上海はロサンゼルス都市圏、バンコク、ニューヨーク都市圏に次いで世界で4番目に多くの日本人がいる外国の都市である(2017年10月1日時点)。

その上海に蒼井そらの熱烈なファンであるという方淵文さん(32歳)を訪ねた。

方さんは、坊主頭にヒゲを蓄え、半袖から伸びた太い両腕にはびっしりと刺青が入っている。パンク青年かと見紛うような風貌だが、深緑色のTシャツはよく見ればゲームのロゴが入ったユニクロ製。さりげなく滲む日本贔屓びいきが、ちょっと嬉しい。

両親と同居しているという古いマンションの一室にお邪魔した。「散らかっていますけど」と、頻りに照れる方さんは、見た目に似合わず気さくな人物だった。