公務員の大規模リストラも起こり得る
3つめの理由は「公務員の安定神話の崩壊」です。公務員はクビにならない、国や自治体は決して破綻しない、というのは今や事実ではありません。実際には政府や自治体側のコストを理由に公務員がクビになる流れが完成しつつあります。そのきっかけは民営化です。
最初の導入は、中曽根内閣が手がけた3公社の民営化、つまり公共事業体と呼ばれていた3つの事業をそれぞれNTT、JR、JTの民間会社に変えたことでした。
次に大きな転機となったのが小泉内閣で行われた郵政民営化です。郵政は国鉄とはちがい、あくまで公務員がその職務を担ってきましたが、民営化されたことで公務員は社員へと地位が変わったのです。
そして今、その日本郵政では郵便局員1万人のリストラが話題になっています。そもそも日本郵政の本業である「ものを運ぶ」という業種は日本全体でいえば成長産業ですし、人の採用も難しいジャンルです。
それにもかかわらず1万人をリストラしなければならないのは経営の無能に他なりません。本来業務にフォーカスせずに金融商品を売らせ、はては「記念切手を売り切るまでは帰ってくるな」というパワハラ指令を局員に出すような企業力自体を問題にするべきです。
しかし民営化されたので、経営が危機的になれば整理解雇も認められます。因果関係としては経営の無能が原因だとしても、結果としてのリストラは認められる。そうして1万人がリストラされれば、公務員として雇用された人の大規模リストラとしては、これが最初の事例となるわけです。
「公務員は安泰」という時代の終焉
さらに公務員には水道、清掃、交通といった「現業」と呼ばれる業務がたくさんあります。こうした業務は主に地方自治体が担ってきましたが、コスト負担が重いことからたびたび民営化が取り沙汰されています。「公務員は安泰」という時代は終わりかけているのです。
このような3つの理由を通じて、「仕事が少なくて」「給料がそこそこ出て」「地位が安定している」という地方公務員のメリットも、「権限が強く」「国を背負って仕事をする責任が与えられる」というキャリア官僚のメリットも失われつつあります。それが若者の公務員離れを生んでいるのです。
皮肉な話ですが、若者の公務員離れは肥大化した政府や自治体のスリム化には役立つかもしれません。しかしそれは同時に、国民に提供されるサービスの弱体化にもつながります。
責任感ある若者が「それでも公務員として社会に尽くしたい」と思える程度の魅力は残さなければ日本社会は成り立たない。これ以上の公務員の地位の悪化は日本にとってマイナスです。公務員離れは私のような民間人にとっても対岸の火事ではなく、私たちの未来を決める重要な問題なのです。