これらの出来事は、この時期「鬼滅の刃」の知名度を、普段マンガやアニメをみない一般層にまで繋ぐ“チャンネル”として機能していたのでしょう。

こうした流れがかつての「君の名は。」と同様に、もはやアニメ好き云々に関係なく「今この作品を知らないのはやばい」という世間の空気を形成して、12月の2500万部から1カ月ほどで4000万部突破という累計発行部数の急上昇を生んだのだと思います。

「君の名は。」と「鬼滅の刃」の現象に違いがあるとしたら、約2時間で完結する映画と違い、“完結していないマンガ原作作品”ということで、新刊の発売や劇場版の公開等、まだまだ新たな展開が控えている点です。

原作の新しいエピソードに伴い、それに付随したコラボ企画やグッズ販売等も行われていくので、展開によってはブームもより長期に渡り続く可能性があります。

「鬼滅の刃」現象が起きた3つのポイント

今となっては後付けにもなりますが、こうして振り返ってみると、「鬼滅の刃」が社会現象に至ったポイントとしては以下の3つが考えられます。

【ポイント①原作自体の面白さ】

1つ目は何よりの大前提として、幅広い層に受け入れられる原作の面白さと、ブームの火付け役となった高評価なアニメ化があったから、というのは間違いないでしょう。

しかしコンテンツが無数に溢れる現在、どれだけ素晴らしい原作やアニメがあっても、それを好きになってくれる人々にきちんと届かなければ決してブームは起きません。

【ポイント②短期間に4回のファン層拡大】

そう考えると2つ目のポイントは、内容以外の外的要因として、前述4回のファン層拡大が共時的に起きていったことだと思います。

素晴らしい原作とアニメのリリースに、上記⑤に至るまでの条件やタイミングが上手くかみ合い、アニメやマンガ好きに関わらず「鬼滅」にハマるポテンシャルを持つ潜在的なファンにまできちんと作品が届いた結果が、この「鬼滅の刃」現象なのでしょう。

ファンの熱量を次々と繋げ続けたオンライン

【ポイント③SNSの口コミと後追いできる配信環境】

3つ目は、ポイント②の潤滑油でもある配信環境やSNSの存在です。

アニメ開始当初から上記①のファンが毎週のようにSNSでアニメの凄さを投稿し続けていたことや、その口コミが届いたときに②や③のファン層が後追いできる配信環境があったこと、④に繋がる最新刊売り切れの話題やランキング独占の情報も、SNSやネットニュースなどを通して広まった話題でした。

それまでに盛り上がりが途切れてしまっては⑤にまで至らなかっただろうことを考えると、今回の現象には、ファンの熱量を次々と繋げ続けたオンライン上の出来事がいかに重要であったかということも窺えます。

「鬼滅の刃」を通してみえてくるもの

当初は「進撃の巨人」にも似ていると感じた本作の盛り上がり方ですが、これほどの短期間で爆発的に、しかも最近の報道番組での特集によると70代や80代といった層にまで人気が広がっている(注6)という現状をみると、いよいよそれとも異なる位置づけになってきているように思います。

注6:高齢層にまで本作が楽しまれている理由としては、西洋風の舞台設定や登場人物の名前が横文字である「進撃」と比べて、大正という時代設定や和名の登場人物といった要素がハードルを下げていることが考えられる。