マイナンバーでピンポイントな給付が可能になる
今回の騒ぎで、医療分野のオンライン診療の普及、教育分野における遠隔教育システムの整備などが進んでいくと予想されるが、マイナンバーを活用して税務情報を社会保障情報と連携させ、新たな国民のセーフティーネットを構築することも、デジタルガバメントの重要な政策だ。
これには時間がかかるという反論があるかもしれないが、2014年4月の消費税5%から8%への引き上げ時には、住民税非課税世帯に一人当たり1万5000円を給付した。その際自治体には、給付のためのシステムが整備されている。
今回は、これを基に、「住民税非課税かどうか」で線を引くのではなく、マイナンバーを活用して「一定の所得基準(例えば世帯所得700万円以下)」で線を引けばよい。そのためのシステムの改修費用は国が負担する。間に合わなければ、国が制度設計して地方自治体で執行(給付事務)を行うような措置も検討すべきだ。
これにより、例えば1‐3月の段階で前年より所得が大きく減少したフリーランス・個人事業主、雇い止めや解雇にあった給与所得者などを把握して手厚く給付することも可能になる。一方で、国・地方公務員や大企業正社員、さらには年金生活者など被害の少ない者は給付の制限・排除をすることもできる。
米国でも、欧州諸国でも、番号により国民全員の税情報(課税所得)と社会保障給付が連携され、有機的に活用するシステムが構築されている。英国が20日に打ち出したフリーランスの所得補償は、この制度(ユニバーサル・クレジット)を活用して緊急的に行われる。
この機会にわが国もデジタルガバメント化を進め、新たな国民のセーフティーネットを設けるべきだ。今後またやってくる可能性の高い危機への対応にもなる。