問題は「アルコール度数の高さ」ではない
手頃に酔えるスロトング系缶チューハイだが、アルコール度数は9%と高い。
ビールや通常のハイボールのアルコールは5%前後。ビールでさえ一気飲みすれば、結構酔いが回ってしまう。その2倍近い強さなのだからビールと同じように飲むのは危険といえる。
国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所の松本俊彦医師は、自身のFacebookに「500ml缶のストロングゼロを3本飲むと、自分を失って暴れる人が少なくない」と投稿している。松本氏は、「人工甘味料を加えたエチルアルコール、つまりや薬物と同じであるため、ドラッグと同様に規制対象にすべき」とも指摘している。
それほどに安価で酔ってストレス発散したい時代なのかと切なくもなってくる。
しかしだ。
喉の渇きを潤すために、ゴクゴク一気に飲む、2本、3本、4本と続けて飲む、眠りたい一心で飲む、といった飲み方がよくないわけで、アルコール9%だから悪いわけではないと筆者は言いたい。
だって、ドイツワインのアルコールも9%程度。平均11%程度が主流のワイン世界から見れば、9%なんて、がぜん低アルコールワインにあたる。というか、全然酔えないワインとさえ言えてしまう。日本酒は16%程度、焼酎は25%、ウイスキーやジンは40%。アルコールの数字だけ見れば、9%なんて大した数字ではない。
どこが問題かといえば、ゴクゴク一気飲みが危険ということなのだ。
炭酸ベースで果実の風味が爽快でどうしてもゴクゴク飲みたくなる香味ではあるが、そこは9%を意識して、ゆっくり飲む、氷入りのグラスに注いで飲む、料理と一緒に楽しむなどすれば、ほかの酒同様ゆったり酔えるのだ。決して、ドラッグと一緒ではないのである。現にストロング系缶チューハイのCMではゴクゴク飲めとはひとことも言っておらず、果汁感がすごいこと、料理に合うことを提唱している。
強アル戦争はどこまで加熱するのか
ストロングゼロを筆頭に、ビール大手4社はこぞってストロング系のアルコール缶「RTD(レディ・トゥ・ドリンク。栓を開けてすぐ飲める低アルコール飲料のこと)」を発売している。各社、「果汁感」「糖類ゼロ」「プリン体ゼロ」のヘルシーイメージと「ドライ」「すっきり」「強炭酸」で料理と合う点を前面に出し、し烈な争いを続けている。
これらは、少し前から始まっている「糖類ゼロ」「プリン体ゼロ」「カロリーオフ」を表示している機能性ビール類からの流れと、居酒屋の定番スターターであったビールを完全に席巻した「ハイボール」人気が、この「強アルRTD」への導線になっている。
これからはますます商品が多様化し、より複雑な強アル戦争になると想像する。
飲み方次第で手軽にストレス発散できるのが「強アルRTD」の魅力であることは間違いない。ドラッグと同じなどと言われて市場からなくなったりはしないでほしいものだ。
なお、全種類の酒を愛する者としては、ベースのアルコールのクオリティを上げてほしいこと、また、できるだけ人工甘味料などを使用せず、自然な味わいにしてもらいたいことを付け加えておく。