同業にも異業種にも代替されやすい大戸屋

大戸屋は全国に約350店を展開し有力な定食チェーンではある。だが「まいどおおきに食堂」(約410店)や「やよい軒」(約380店)など、同業で強い競合がいる。つまり、業界で突出した存在ではない。

また、定食店はほかの専門店など異業種にも代替されやすい。ホッケの定食など魚系の定食であれば海鮮系居酒屋に、とんかつの定食であればとんかつ店に、野菜や肉を炒めたり揚げたりした定食であれば中華料理店に代替されてしまう。

このように大戸屋は、同業にも異業種にも代替されやすいポジションにある。そのため値上げすると客離れが起きやすく業績悪化につながりやすいのだ。

ココイチ同様に「唯一無二」のQBハウス

一方で「ほかで代替しづらい存在」であるがために、ココイチのように値上げで業績向上につながったところもある。外食店ではないが、キュービーネットHDが展開するヘアカット専門店の「QBハウス」がそうだ。

QBハウスは19年2月1日に、通常料金を税込み1080円から1200円に、シニア料金を1000円から1100円とする大幅な値上げを行った。だが、その後の12カ月間の既存店売上高は全ての月がプラスとなっている。プラス幅も大きく、19年10月(3%増)以外はいずれの月も6%超の大幅増を達成している。2つの月では10%超もの増加だ。同社は客数と客単価の増減率を公表していないが、おそらく客数が減った一方で客単価が大幅に上昇し、既存店売上高が増えたと考えられる。

キュービーネットHDの業績は好調だ。19年7~12月期の連結決算(国際会計基準)は、売上高が前年同期比10.1%増の111億円、営業利益が43.0%増の12億1400万円、純利益が35.4%増の7億9400万円と大幅な増収増益を達成した。同社は増収増益について19年2月の値上げが寄与したと分析している。

QBハウスが大幅値上げを実施したにもかかわらず業績が好調なのは、「ほかで代替しづらい存在」だからだ。値上げしてもほかと比べてまだまだ安い。最近は「1000円カット」をうたう理美容店は増えているが、QBハウスのように高い知名度とブランド力を有し、好立地にある競合はいない。消費者はQBハウスが高くなったからといって簡単に店を変えることができない状況にある。

ココイチとQBハウスの好調な業績が示しているように、値上げの成否は「ほかで代替しづらい存在」という点に大きく左右される。ココイチはおそらく今後も値上げを仕掛けてくるだろう。限界はどこにあるか。その見極めが重要となる。

【関連記事】
埼玉県民が愛用「ぎょうざの満洲」に揚げ物が1種類しかない理由
コーヒー100円の「低価格路線」で大復活したマクドナルドの行く末
1箱3800円の高級グミ「グミッツェル」がバズっている理由
病気にならない人ほど『孤独のグルメ』の食べ方をやっている
チョコレートを食べても太りにくい「魔法の時間」をご存知か