値上げで業績が悪化した鳥貴族と大戸屋
20年2月期の客数は前述の通り1.5%減だったが、客単価が2.1%増と大きく伸びたため、既存店売上高は0.5%増で着地した。昨年の台風19号や消費増税といった特殊なマイナス要因が加わった中でプラスを確保したのは、健闘したといえる。
値上げ後、客数減を客単価増で補えず売り上げを落としてしまう外食チェーンは少なくない。焼き鳥チェーンを展開する鳥貴族は、17年10月1日に商品を一律税抜き280円から298円に値上げした。その後の12カ月間は、客単価こそ全ての月でプラスだったものの、客数が11の月でマイナスとなり、結果として既存店売上高は10もの月でマイナスとなった。
定食チェーンの「大戸屋」を展開する大戸屋ホールディングス(HD)でも、同様のことが起きている。大戸屋で19年4月下旬に定食の一部を値上げしたほか、安価で人気のあった定番商品「大戸屋ランチ」を廃止して価格帯を引き上げた。その後の客単価はおおむね上昇したものの、客数が20年2月までの11の月全てでマイナスとなり、結果として既存店売上高も全ての月でマイナスとなった。
結果、両者はどちらも値上げ後の決算が思わしくない。鳥貴族は18年7月期の単独最終利益が前期比31.6%減と大きく落ち込み、19年7月期は最終赤字に転落した。大戸屋HDは19年4~12月期の連結売上高が減収となり、最終損益が赤字に転落している。
ココイチ値上げ後の決算は好調
一方、壱番屋は値上げ後の決算が好調だ。19年3~11月期連結決算は、売上高が前年同期比2.4%増の383億円、営業利益が25.4%増の42億円、純利益が19.5%増の27億円と増収増益だった。同社ではこの理由を19年3月の値上げが寄与したと分析している。やはり、ココイチの値上げは成功したと言っていいだろう。
なぜココイチは値上げで成功したのか。大きな理由としては、ココイチがほかで代替しづらい存在であることが挙げられる。カレーを提供する店は数多く存在するが、ココイチほどメニューが充実していて、「カレーを提供する店」としての知名度とブランド力がある店はない。