ライバルになるカレーチェーンの不在

同業のカレーチェーンには脅威となるブランドはない。ココイチは国内に1200店超を展開するのに対し、業界2位とみられる「ゴーゴーカレー」は約70店にすぎない。

では、カレーを提供する異業種はどうか。たとえば牛丼チェーンの「すき家」(国内店舗数約1900店)と「吉野家」(同1200店)、「松屋」(同1000店)でもカレーを出している。これら3社のカレーは高い競争力がある。

基本となるプレーンなカレーでいうと、すき家の「サラ旨ポークカレー」(並盛り税込み490円)、吉野家の「スパイシーカレー」(同税抜き328円)、松屋の「創業ビーフカレー」(同税込み490円)はいずれも安価で、コストパフォーマンスは高い。ココイチの「ポークカレー」(税込み514円or493円/地域によって異なる)と遜色ない。

1億通り以上の組み合わせが人気を支える

だが、ココイチにとって牛丼チェーンのカレーは脅威とはならない。ココイチは圧倒的な品ぞろえを構築しているからだ。ココイチのカレーは、ソースが5種類、ライスの量は100グラム単位、辛さは普通から10辛まで、甘さは5段階、トッピングは40種類以上から選べる(3月現在のメニューブックより)。このため1億通り以上の組み合わせが可能とされている。この豊富な品ぞろえが、「ほかで代替しづらい存在」の根幹となっているのだ。

ココイチにしろ牛丼チェーンにしろ、プレーンなカレーはコストパフォーマンスの高い商品だが、さすがに毎回では飽きてしまう。牛丼チェーンはあくまで牛丼の店であり、カレーの品ぞろえはココイチほどではない。カレーだけで飽きさせないようにするのは困難だ。しかし、ココイチは品ぞろえが豊富なため、客は好きなように変化を加えられる。こうして考えるとココイチには大きな競争相手が存在しないことがわかる。

「ほかで代替しづらい存在」であれば値上げして大きな客離れは起きず、収益性の低下を避けられる。むしろ収益性が高まることもある。この観点で考えると、大戸屋が値上げで業績を悪化させた理由がわかる。大戸屋は「ほかで代替しづらい存在」とは言い難い存在なのだ。