なぜ韓国人ゴルファーは世界で成績を残しているか

井上のスクールは小学1年生から受け入れている。

「9歳ぐらいまで、上手くなるのは年齢より大人びている子です。ティーチング期とコーチング期の2種類があります。大人びている子、ちゃんとコーチのいうことを聞く子、思考力のある子は、適正な練習を積んでいくことができるので、すぐにティーチング期からコーチング期に入ることができる。運動能力が高くても、練習に集中できなくて走り回ってしまうような子は、最初は伸び悩む。でも、時間が経つとみんな大人になる。その差はだんだんなくなっていく。低年齢の段階の上手い、下手というのは全くあてにならない」

井上は2010年から1年間、早稲田大学院スポーツ科学研究科に入学し、『韓国におけるプロゴルファーの強化・育成に関する研究』という論文を発表している。

同じ東アジアに位置する日本と韓国は骨格的、体格的な差はほとんどない。そして韓国は日本と比べて、圧倒的に競技人口が少ない。それにも関わらず、なぜ韓国人ゴルファーが世界で成績を残しているかを調査、分析したものだ。

韓国人プロゴルファーへのアンケートの結果、〈ゴルフを始めたときから、ほぼ毎日練習している〉〈一日の平均練習時間は、小学生の時から2時間以上3時間未満と3時間以上が約90%を占めている〉ことが分かった。韓国のプロゴルファーたちは高校生までに強制的な練習によって、プロのレベルまで引き揚げられていた。

競技をはじめたばかりで才能の有無を悟っちゃいけない

同様の試みは日本でも行われていた。

TKU熊本ジュニア塾――通称・坂田塾である。小学4年生で入塾、毎日500球を打ち込み、週末および長期休暇中は毎日ラウンド。坂田塾には通算82名が在籍、男子6人女子13人がプロテストに合格した。その中には、2007年賞金女王の上田桃子や2008年賞金女王の古閑美保が含まれている。

「この坂田塾の練習量に意味があるんじゃないかと思うようになったんです。坂田塾の練習は高校卒業までの9年間でおおよそ1万時間。つまり1万時間を費やすことでプロゴルファーレベルに到達できる。韓国では、学校に行かずに3、4年で1万時間に到達させている。JPGA(日本プロゴルフ協会)の名簿を調べてみると、初めてゴルフクラブを握ってからプロテストに合格するまではだいたい10年。これは約1万時間に相当する」

ある一定以上の運動能力のある子供ならば、正しい練習方法で1万時間費やせば、プロレベルに到達するということですか、と訊ねると井上は「ええ」と頷いた。

「ただ、プロレベルに到達したからといって、プロテストに合格する、あるいはツアープロになれるという意味ではないです。性格、メンタル、知力、フィジカル、躯のコントロール力などの差が出て来る。ただ、1万時間の練習によってプロレベルという幅の中に収めることはできる。よく親から、うちの子どうですか、才能ありますかって聞かれるんです。1万時間に到達するまで、分からないとしか答えられない。その段階になってはじめて、プロとしての特性や能力があるか、という判断ができる。だからはじめて500時間ぐらいの段階で、この子に才能がある、ないというのを語っちゃいけない。語るのはおこがましい」