子供の頃に熱中したスポーツは、人格形成に大きな影響を与えているのではないか。集団競技か、個人競技か。ポジション、プレースタイル、ライバルの有無……。ノンフィクション作家の田崎健太氏は、そんな仮説を立て、「SID(スポーツ・アイデンティティ)」という概念を提唱している。この連載では田崎氏の豊富な取材経験から、SIDの存在を考察していく。第7回は「ゴルフ」について――。
ゴルフ
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親が強制的にやらせていれば、ゴルフは上手くなる

日本におけるゴルフ競技は、親の介在を抜きにできない。

ゴルフもかつては野球やソフトボールなどの他競技からの転向が多かった。道具、練習場所、ラウンドフィーなどの出費が掛かるため、金銭的余裕のある社会人の趣味とされていたのだ。しかし、石川遼、松山英樹といった20代のプロゴルファーはみな小学生からゴルフをはじめている。

「親に連れられてきて、ゴルフを好きになる子は上手くなります。でもゴルフが嫌いだと言っている子も親が強制的にやらせていれば、上手くなる。上手くなればゴルフが好きになる。小さい頃、ゴルフは嫌いでしたというプロはいっぱいいますよ」

と語るのは、井上透である。

井上は佐藤信人、中嶋常幸、加瀬秀樹などの男子プロゴルファーのツアーに帯同した経験を持つコーチである。彼が現れる前、日本のプロゴルファーは「師」である先輩ゴルファーから学んでいた。選手と対等であるという、近代的コーチの先鞭をつけたのが井上だった。現在は横浜市で『トゥルーゴルフアカデミー』を主宰する傍ら、成田美寿々、穴井詩、武尾咲希、河野杏奈などの女子プロゴルファーのコーチング、東京大学ゴルフ部の監督を務めている。