こうしたことから、追越車線を走行していたという落ち度はあれど、今回追突してしまったトラックドライバーは巻き添えを食った感が否めず、検察の下した不起訴処分も、道路環境からして妥当だったと言えるだろう。

被告の裁判で、「両親を奪い申し訳ない」と遺族に反省の意を表したトラックドライバーの心情を考えると、本当に複雑な気持ちになる。

煽り運転は「する側」「される側」に特徴と原因がある

こうした危険運転は、この東名事故のように第三者をも巻き込みかねない「悪しき行為」だ。しかし、煽り運転そのものは、ハンドルを日々握るドライバーにとって、それほど珍しいものではない。

この事故のような悪質なケースは稀としても、普段、日常的に運転しているドライバーならば、誰しもが煽られた、または煽ってしまった経験があるはずだ。

現役当時、アイポイントが高いトラックの車窓から周囲の運転事情を観察していた筆者は、実に様々な光景を目の当たりにした。その中でも多く遭遇したのは、やはり煽り運転などの危険運転だ。煽り運転には、する側にもされる側にも、それぞれ特徴と原因がある。

煽られやすい「運転弱者」「大型トラックと軽自動車」

まず、煽られる側の2つのタイプと原因を紹介しよう。

一つは、「運転弱者」だ。

初心者や女性、高齢者の中には、運転が得意ではない「運転弱者」が比較的多く存在する。彼らの場合、無意識のうちに無駄なブレーキを頻繁に踏んだり、車間が上手く取れず詰めすぎたり、スピードが安定しなかったりすることで、周囲のドライバーをイライラさせてしまうことがあるが、そんな彼らの運転が、「煽る側」の引き金になることがある。

中には、運転弱者ばかりを狙う悪質な煽りドライバーもおり、初心者や高齢者が理解を得るために貼っているマーク(ステッカー)がむしろ、彼らに向けた「目印」になっているのも事実だ。

そして、煽られやすいもう一つのタイプは、「大型トラックと軽自動車」。

トラックがノロノロ運転せざるを得ない事情は、第1回で説明した通りだが、遅いトラックは、高速道路でも一般道でも、とにかく乗用車などからよく煽られる。

中には「トラックは左車線だけ走ってろ」という声もあるが、これまで述べてきた通り現在の日本の道路事情と、時間との戦いを強いられる物流の現状からすると、そんなわけにもいかないのだ。

一方、こうしたトラックに匹敵するほど煽られている光景を目にするのが、「軽自動車」。

軽自動車が煽られるのは、ドライバーに前出の「運転弱者」が比較的多いというのが一因になっていると思われるが、このクルマは構造上、どうしても他車より衝撃に弱いため、事故を起こすと被害が大きくなりやすい。

ゆえに、軽自動車のドライバーは、後述する「煽られないための対策」や「煽られた時の対処法」をより強く検討したほうがいいかもしれない。