景気指数は製造業・非製造業ともに過去最低

今回の新型肺炎の発生は、世界経済を減速させる大きな要因であることはまちがいない。その背景には、経済成長の限界を迎えた中国が、新型肺炎の感染拡大によってこれまで以上のスピードで減速するリスクが高まっていることがある。

最近の経済指標をみると、PMI(購買担当者景気指数)が急速に悪化している。2月、中国の国家統計局が発表する製造業PMIは過去最低の35.7だった。1月の製造業PMIが50だったことを考えると、中国の製造業の業況悪化はかなり深刻だ。また、2月の非製造業PMIも前月より24.5ポイント低い29.6と過去最低だった。

これまで、製造業に比べて非製造業の景況感が幾分か良好な状態を維持してきたこと踏まえると、中国経済はかなりの勢いで落ち込みはじめている。これは、世界の多くの国に共通するリスクといえる。

国家統計局が発表するPMIに比べて、中小企業の割合が高いといわれる財新(中国のメディア企業)の発表したPMIを見ると、中小企業はさらに厳しい状況を迎えていることがわかる。財政のサービス業PMIは1月の51.8から2月は26.5とあまりに落ち込み方が大きい。

中小企業の約85%が「維持できるのは3カ月以内」と回答

北京大学などが中国内995社の中小企業に行ったアンケートでは、“保有現金でどのくらい会社を維持できるか”という質問に、回答企業の約85%が「3カ月以内」と回答した。肺炎による経済の混乱が長引けば中国で企業の連鎖倒産が起きる可能性は高い。

それは今後、中国の失業問題を深刻化させるだろう。中国人民銀行(中央銀行)は金融緩和を実施し、中国銀行保険監督管理委員会(銀保監会)が条件を満たした中小企業に対して、6月30日まで元利金支払いの延期を申請できる措置を設けるなど、中国は異例の措置をとおして中小企業の経営支援に注力している。

ただ、中国本土の銀行勢は規制金利のもとで国有企業など大手企業への融資を優先する傾向にあるので、もともと中小企業を取り巻く金融環境は厳しい。そう考えると、中国経済がさらに減速する展開は軽視できない。それは、米国をはじめ、世界各国の経済にかなりの下押し圧力となる。