寒冷地でリスクが高く、温暖地でリスクが低いとは言えない

次に、地域別のリスクについて見てみよう。

インフルエンザは冬場に流行し、死亡数も、寒く乾燥した時候に多くなる。そうだとすると、地域の寒暖差がインフルエンザ死亡率にも影響していると考えてもおかしくない。果たして、どうなのか。

これまで見てきたように、高齢者ほどインフルエンザ死亡率は高くなる。そのため、寒冷地であり、かつ高齢化の進んだ地域ほど、インフル死亡率も高いという現象が見られるはずである。

こうした考えから、図表5には、都道府県別に高齢化率とインフルエンザ死亡率(10万人あたりインフル死亡者数)との相関図を掲げた。単年度であるとバラツキも大きくなるので、ここでは、死亡率について2017~19年の3年平均を採用している。

高齢化の進んだ地域ほどインフル死亡が多く、寒暖差は無関係

インフルエンザ死亡率の都道府県トップ5は、上から宮崎、鹿児島、高知、島根、熊本である。すべて、九州、中四国といった西日本の県である。

逆に死亡率の低いほうの5位は、低い順に石川、愛知、神奈川、岡山、広島となっている。こちらは地方の拠点都市圏を含む県が多くなっている。

宮崎、鹿児島、熊本、佐賀など暖かい九州地域で高いインフル死亡率

相関図の全体の分布を見れば、高齢化の進んで地域ほど、インフルエンザ死亡率が高いという一般傾向があることは明瞭である。点線で書き入れた一次回帰線がこの傾向を示している。

しかし、この一次回帰線から大きく外れた地域も多い。もし寒暖差が影響しているとするなら、一次回帰線より上(死亡率が高い)に寒い地域が分布し、下(死亡率が低い)に暖かい地域が現れているはずである。

ところが、実態はそうではない。むしろ、一次回帰線より大きく上に外れている(死亡率が高め)のは、宮崎、鹿児島、熊本、佐賀といった暖かい九州地域と栃木、群馬といった北関東の県である。

そして、一次回帰線よりかなり下(死亡率が低め)に位置する石川、新潟、長野なども、冬場、暖かい地域とは決して言えないのである。

また、寒冷地の代表である北海道や温暖地の代表である沖縄は、両方とも、むしろ一次回帰線の線上近くに位置している。つまり、それぞれの高齢化率において特段目立った(高い・低い)死亡率を示しているわけではない。温暖な沖縄がとりたてて死亡率が低いとは言えないのだ。

とはいえ、地域別のリスクとして確実に言えるのは、「高齢化率の高いエリアほど死亡率が高くなる」ということだけであり、それ以外の要因は、依然として不透明というのが実情である。むしろ、地域的な生活習慣や保健対策・体制が関係している可能性もある。

*ここで掲げた相関図の高齢化率は、通常の65歳以上人口比率ではなく、75歳以上人口比率をとっている。これは、75歳以上で特にインフルエンザ死亡のリスクが高いからである。実際、一次回帰線の当てはまり度を示す「R2乗値」は65歳以上人口比率であると0.3168と75歳以上人口比率における0.3678よりかなり低くなってしまう。

以上、新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスが、同じような感染・死亡リスクがあるなら参考になると考え、インフルエンザ死亡数の男女・年齢構造、および地域構造についてのデータを紹介した。

確定したことはまだ何も言えないが、もしインフルエンザと新型コロナの感染の広がりに似たところがあるならば、上記の分析は感染防止に役立つかもしれない。

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