高齢者が増えるほど、インフル死亡者数も死亡率も高まる可能性

そこで、今回は「高齢層拡大の影響」について図表3にデータを示しておいた。

インフルエンザ死亡率の推移

一般に、時系列比較や地域間比較では、人口の増減などに左右されない指標として、10万人当たりの死亡数(死亡率)を、実数の死亡数に代わって使用される。

ここでも、年齢別死亡数の推移(図表3)と関連して、インフルエンザ死亡率の推移(図表4)を掲げている。2000年以降であると人口の増減はそれほど大きくないので、死亡数の動きと死亡率の動きはあまり変わりがない。

ここで注目したいのは「年齢調整死亡率」との差分の推移である。年齢調整死亡率は、もし、当初の年齢構成が不変であったとしたら、どんな推移をたどるかを年齢別死亡率から加重平均して計算したものである。これと普通の死亡率との差分の推移が高齢層拡大による要因効果と考えることができる。

図表4を見てみると、2010年ごろまでは、高齢層拡大の要因はあまり大きく影響していなかったが、それ以降は、死亡率増加の半分近くが高齢層拡大要因になってきていることが理解されよう。これはおそらく、団塊の世代が高齢化して、いよいよインフルエンザに弱い年齢層に達してきたからではないか。

もちろん、インフルエンザ死亡率の上昇がこうした年齢要因だけで説明できるわけではない。しかし、図表4の年齢調整死亡率で推移を追うと2018~19年の値は、それまでのピークである2005年の数値をそれほど上回っているわけでもない。

従って、年齢要因を除けば、インフルエンザ死亡の増加は、単なる周期的な年次変動の範囲内と見なすこともできるかもしれない。要するに、今後、さらに高齢者が増えるほど、インフル死亡者数も死亡率も高まる可能性があるのだ。