「政府癒着型」の経済的関与

イランでも昨年11月中旬以降、政府によるガソリン価格の値上げ決定を機に、抗議デモがテヘランのほか、シラーズ、マシュハド、ビールジャンド、マフシャフルなど各地に広がり、激しい衝突が続いた。これまでの死者は300人以上、1000人以上が逮捕されたともいわれる。

さらに、イラン当局が誤ってウクライナ民間機をミサイルで撃墜したことに対し、国民の不満・怒りが沸騰。「政府は恥を知れ」などと訴え、革命防衛隊のスレイマニ司令官の旗をけり落としたり、そうした姿を見て拍手する大勢の若者たちがいた。

中国とイランとの経済関係も近年著しく深まっているが、イラク政府やイラン政府と癒着した経済的展開は、こういった若者たちの反発や抵抗を招くことは想像に難くなく、パキスタンと同様の反中テロが発生する可能性がある。

すでに中国へのジハード闘争を掲げる組織も

2009年10月、国際テロ組織アルカイダの幹部だったアブヤヒヤ・リビ容疑者は、北京のウイグル族への抑圧に言及し、北京政府に対する聖戦を世界中のイスラム教徒に呼び掛けた。同年7月には、アルジェリアなど北アフリカ地域を拠点とするマグレブ諸国のアルカイダ(AQIM)が中国への報復を宣言していた。さらに、シリアやイラクでは、最大5000人ものウイグル人が反体制組織やイスラム過激派などに散らばり、一部のウイグル人たちは中国へ聖戦を呼び掛ける動画やメッセージを配信している。

アラブの春の際も見られたように、経済的不満を訴える若者の圧倒的多数は、こういったイスラム過激派に加わることはないだろう。だが、自らの怒りや不満を表現するツールとして、イスラム過激派がごく少数の若者の受け皿になる可能性はある。