では、親権の「適切な行使」とは何なのだろう。どこまでが「必要な範囲内」の懲戒なのか、疑問が残るのも確かである。
「一概にはいえないが、単なる親のストレスのはけ口として子どもに身体的苦痛を与えることは許されない。そうでなくても、体罰は次第にエスカレートしがちなものであり、歯止めをかける必要がある。具体的には子どものしつけに結びついているかどうか(必要性)、度を越していないかどうか(相当性)が厳しく問われなければならない。また、しつけをめぐる社会的な時代状況の変化も加えて考えていく必要がある」(同前)
たとえば、子どもを一時的に家から閉め出すことは、法律的に許される懲戒なのだろうか。
「子どもを家の外に閉め出す時間的長さや時間帯、外気温などが、主な判断要素になると考えられる。たとえば、真夏の猛暑の中で長時間放置したり、真冬の雪降る中で服を着せずに閉め出したりすれば、懲戒としての体罰を通り越し、違法な虐待となる可能性が高い」(同)
このように、懲戒権の行使の加減を間違えれば、児童虐待、すなわち傷害罪や保護責任者遺棄罪などの犯罪として処罰される危険がある。だから、いっそのこと、親の懲戒権を定める民法822条を削除すべきではないか、との議論も具体的に持ち上がっているという。だが、法律だけを調整しても、児童虐待の解決にはならない。
現代は、親子の関係性のみで構成される核家族化が進み、多くの親が子育てに不安を覚えやすい状況になっている。子を持つ親同士で「言うことを聞かない子どもに、どう接するか」を話題に挙げるなどして、自らの子育てを客観的に見つめ直してみてはいかがだろうか。
(PANA=写真)