「集中排除原則」のため両社の代表取締役を兼務できない
MXでも、自前でコンテンツを作らない方針に徹し、低コストの通販番組とアニメ再放送に頼って09年に黒字化したが、地上波デジタルのおかげで他のテレビ局とアンテナを共用できるようになったのが主因で「誰でも黒字化できた」と他局はその経営手腕を冷ややかに見ている。
ただ「集中排除原則」があるため、後藤氏はTFMとMX両社の代表取締役を兼務できなかった。当初はTFM社長(07年から会長)の代表権だけ、MXは小田急出身の副社長が代表権を持つという変則だった。2010年に後藤氏はTFMの代表権を冨木田氏に譲り、入れ代わりにMXの代表権を持つ。
こうみるとラジオ・テレビ「両手に花」の一体支配が悲願とみられ、「集中排除原則」は邪魔だったに違いない。そこで、コンプライアンスを口実に後藤氏の影響力を徐々に排してきた冨木田体制を「粛清」したと関係者は見る。
TFMの「粛清」と「粉飾決算」の不自然さ
この「粛清」でTFMとMXにモラールダウンが起きた。両社とも辞める社員や幹部が相次ぎ、『欲望の塊』のようなトラブルには逃げの一手。しかもTFMは前経営陣に対する責任追及が中途半端である。深追いすると返り血を浴びるので、刑事告発や損害賠償請求訴訟を避けて“寸止め”にしたと関係者は見る。
昨年暮れの幹部会合の席では、後藤氏が次は両社統合と檄を飛ばしたとの情報が流れた。そこへランボルギーニの不祥事が発覚、MXが公共の電波の番組枠を又貸しして稼ぐ「欲望の塊」であることをつつかれたくない広報は貝になった。TFMも「報告書以上のことはお答えできません」と質問状にノーコメントだった。
肉を切らせて骨を断つTFMの「粛清」と粉飾決算の不自然さにもかかわらず、臭いものに「フタ」をするなら、監督官庁である総務報情報流通行政局に問おう。会社法違反のみならず放送法119条(不実の公表)にあたるTFMをどう処分したのか。次回はそこが起点だ。