「出演料150万円を支払い、2000万円の景品を争う」は賭博罪の恐れ

『欲望の塊』は1年前の1~3月にMXで午前3時台に12回放送した30分番組で、優勝した人気ホスト、はじめ陸斗りくと氏が1年経ってもスーパーカーが届かないと告発、タレントのギャラや制作会社にも未払いであることが発覚した。

1月21日にはMXが「番組は外部(企画会社)からの持ち込み企画だが、放送責任はある」と腰の引けた謝罪文をネットに掲載。3日後、行方不明のこの企画会社「五行」の担当者が、福岡市西区に駐車中の車から遺体で発見された。「ご迷惑をおかけしました」とのメモがあり、練炭による自殺とみられる。

Black Lamborghini Huracan
写真=iStock.com/MarioGuti
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「五行」はP‐styleなどいくつも社名を持つが正体不明で、ホスト20人足らずに出演料150万円を払わせてネコババ、どこかに流用したか、吸い上げられたかの単純な詐欺に見える。MXも「完パケ納品」で「制作著作権はMXにない」と放送責任だけ認め、「問題解決に向け努力しています」と善意の第三者を装う。

しかし「持ち込み番組」への度を越えた丸投げ――カネ集めも景品代も制作費も外にお任せで、景品やギャラが支払われたかどうかの基本チェックすら1年間も放置するような無責任は、他のテレビ局をあきれさせた。

元特捜検事の若狭勝弁護士が指摘したように、150万円の出演料で2000万円の景品を競えば刑法の賭博罪に抵触する恐れがあり、ホストから「店の広告宣伝費」として金を集めながら「広告放送」の断りがないのは放送法違反が疑われる。

TFMは83億円の巨額赤字で、会長・社長ら取締役7人が退陣

2017年にMXは、報道バラエティ番組『ニュース女子』の沖縄報道で、放送倫理・番組向上機構(BPO)から「重大な放送倫理違反」と勧告を受けたばかり。伊達寛社長が市民運動の代表に謝罪して、番組を打ち切りとしたことは記憶に新しいが、懲りないMXに放送界の目は厳しい。

しかも『欲望の塊』が放映された時期には、MX株を20.33%保有して持分法適用会社にしている筆頭株主のTFMで激震が起きていた。関係者によれば、昨年1月ころ、TFM経営陣が粉飾決算しているとの内部告発があり、大株主の東海大学(TFM株10.22%保有)や東京タワー(同7.28%)から引導を渡された冨木田道臣会長、千代勝美社長ら7人の取締役陣が6月に退陣している。

8月に森・濱田総合法律事務所の弁護士を委員長とする第三者委員会が2017年3月期から3期にわたり粉飾決算があったと発表した。19年3月期は再決算して83億円の赤字を計上している。発覚前の流動資産は72億円しかなく、赤字穴埋めをどうするのか、TFMは連結中間決算をまだ公表していない。