隠しマイクから聞こえた不倫相手の生声

約束の時間、女が店内に現れ、さも久し振りの逢瀬だと言わんばかりの態度で、夫の向かい側の席ではなく、ピッタリとくっついて耳元で何やらささやきだしたのである。

「もうあなたが欲しくって1分も我慢できない」
「今夜は帰さないわ」
「いつものように好きにしていいのよ、今夜も……」

聞くに堪えない言葉が次々に飛び出す。私とセツコさんは、車の中で女の言葉を聞きながら、呆れてため息ばかりついていた。それにしても男を骨抜きにするテクニックの巧みさは、どこで覚えたのだろう。それとも天性のものなのだろうか。

ともあれ女は、しばらく挨拶代わりの卑猥な言葉を夫に投げかけていたが、彼は少しも動じず、いきなりこう切り出した。

「7回も結婚・離婚しているというのはホントなのか?」

突然の思いがけない問いかけである。女は一瞬驚いたようだったが、夫のただならぬ様子を感じ取ったのか、手を引っ張って店を飛び出していった。2人の様子を注視していた探偵たちも後に続き追いかけた。2人の姿を発見したのは、なんと、なぜか無人の交番だった。

それほど明るくはない蛍光灯の下で、やおら女は洋服を脱ぎ捨て全裸になり、夫にSEXを求めていたのである。何を意図して、こんな行動に出たのか誰も理解できなかった。

もしこの瞬間に警官がやってきたとしたら、いろいろ事情を聞かれるだけならまだしも、何らかの罪に問われる可能性すらある。さすがにこの行動に夫もドン引きし、絡みつく裸の女の腕をむしりとって、無言で交番を後にするのだった。追いすがる女は絶叫し夫を引き留めようとするのだか、夫は振り向きもせず急ぎ足で夜陰に紛れていった。

愛人から多額の生命保険がかけられた夫

その夜遅く、妻のセツコさんと夫の話し合いの場が設けられた。夫は女の本性が分かったらしく、交番での出来事をこう話してくれた。

「彼女は交番で裸になって、私に抱き着いてきました。あれは行為の最中、警官に目撃させレイプされたと訴えようとしているんだとピンときました。これまでにもおかしいと思うことは沢山ありましたけど、欲望に負け、ずるずると関係していたんです。でもはっきり分かりました。この女といたら殺されるかもしれないと」

その後、夫には愛人が受取人となる多額の生命保険がかけられていたことも判明した。

不倫調査を行っていると、時折あくどい手口で男を籠絡し、金を要求する女性にハマっている事例を目撃することがある。このような時は依頼者と夫が気の毒でならないが、深みにはまって大怪我をする前に早く気づかせてあげることが大切だと痛感している。